最新記事

災害

世界の自然災害1日1.5回にも 国連防災機関「自己破壊の連鎖」

2022年5月6日(金)09時50分
洪水で浸水した住宅

2030年までに自然災害の発生は世界全体で1日当たり1.5回、年間で560回に達する見通しで、人類は温暖化助長やリスク無視を通じて「自己破壊の連鎖」に陥り、貧困層を何百万人も増やし続けている──。国連防災機関(UNDRR)は26日公表した「自然災害の世界評価報告書」でこう警鐘を鳴らした。写真はカナダ・ブリティッシュコロンビア州で、豪雨が原因で発生した洪水。2021年11月撮影(2022年 ロイター/Jesse Winter)

2030年までに自然災害の発生は世界全体で1日当たり1.5回、年間で560回に達する見通しで、人類は温暖化助長やリスク無視を通じて「自己破壊の連鎖」に陥り、貧困層を何百万人も増やし続けている──。国連防災機関(UNDRR)は26日公表した「自然災害の世界評価報告書」でこう警鐘を鳴らした。

報告書は2年に1回まとめられ、今回は5月にインドネシアのバリ島で開催の「防災に関するグローバル・フォーラム」を前に公表された。それによると、過去20年で年間350回から500回の中規模・大規模な災害が起きたが、各国はそれらが人命や生活に及ぼす本当の影響を「根本的に」過小評価してきた。UNDRRトップの水鳥真美氏は報告書で「真実を語ることによる警告は必要なばかりか不可欠でもある」と強調した。

水鳥氏はトムソン・ロイター財団に「科学は明快だ。災害による被害が発生する前に行動する方が、起きた後で対応するよりコストが小さくなる」と訴えた。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は今年、熱波から干ばつ、洪水に至る気候変動の被害はより発生頻度が高まり、甚大になって、自然環境や人類とその生活場所にダメージを与えるだろうが、温室効果ガス排出量削減と温暖化に順応する取り組みは遅れていると警告した。

UNDRRによるこの報告書も、過去5年で自然災害の発生が増え、規模も大きくなったため、その前の5年間より死者や被害者が増えただけでなく、30年までにあと1億人が貧困化する恐れがあると記している。

報告書が対象としている災害は、洪水や干ばつ、大嵐、地震、疫病など多種多様。国連のアミナ・モハメド副事務総長は声明で「人類の生活や建設、投資といった活動が自己破壊の連鎖に向かおうとしている中で、世界は自然災害リスクをこうした構図に組み込むためにもっと努力しなければならない」と述べた。

途上国にしわ寄せ

報告書によると、過去10年で自然災害がもたらした損害額の年平均は約1700億ドルで、途上国と最も貧しい人々が不相応な苦しみを味わっている。また途上国が自然災害で被った損害額の年平均は国内総生産(GDP)の1%と、高所得国の10倍を超える。特にアジア太平洋地域の損害額はGDPの1.6%と最大だった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

マクロン氏、早期辞任改めて否定 政治混乱もたらした

ワールド

トランプ氏、ガザ戦争終結を宣言 人質と拘束者解放

ビジネス

米国株式市場=大幅反発、米中貿易戦争巡る懸念和らぐ

ワールド

ハマス、ガザ地区で対抗勢力と抗争 和平実現に新たな
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇敢な行動」の一部始終...「ヒーロー」とネット称賛
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中