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どんな手を使っても「勝利」したいプーチンが、ドンバスに執着する理由

Donbas Could Go Bad, Too

2022年4月27日(水)17時25分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

ロシア軍の大隊のいくつかは兵器や装備を多く失い、まともに戦える状態にはない。その穴を埋めるには少なくとも数週間、もしかするとさらに時間が必要かもしれない。

米海軍分析センターの軍事専門家で、ウクライナ情勢について卓越した分析を行ってきたマイケル・コフマンは、4月20日にこうツイートした。

「私は、ロシア軍はかなりの損失を被っており、戦闘能力は劇的に低下しているとみている。残された部隊や兵器をかき集めて補強を試みているが、穴埋めには不十分だ」

開けた地形というロシア側にとって明らかに有利に思える点も、不安要素になる恐れがある。地面がぬかるんでいるため、ロシア軍の戦車は隊列を組んで舗装された道路を使って移動することになるかもしれない。そうすれば、対戦車ミサイルやドローンの攻撃を受けやすくなる。

匿名を条件に筆者のメール取材に応じた米陸軍の元大将は、これらの事実とロシア軍の能力不足を併せて考えると、ロシアがウクライナの防衛線を突破して「画期的な戦果を上げられるかどうかは分からない」と指摘した。

しかし、この人物は「ウクライナ側はロシアを繰り返し阻止する必要がある」とも述べた。防衛線を突破してウクライナ軍を包囲できなくても、ロシア軍は「強引に突き進む」かもしれないという。

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ドネツク地域で対戦車ミサイル「ジャベリン」を準備するウクライナ兵(4月18日)SERHII NUZHNENKO-REUTERS

膠着状態にプラス面も

この予測が正しければ、戦闘は長く激しいものになる。勝敗を決めるのは、どちらが戦略上の大きな勝利を手にするかではなく、どちらが少しでも長く持ちこたえるかという点かもしれない。

膠着状態が続く展開になれば、そこにはプラス面もある。双方が交渉のテーブルに着く可能性が出てくることだ。

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