最新記事

ウクライナ情勢

ロシアが次に狙うのはなぜモルドバなのか

Will Russia Invade Moldova Next? Experts Weigh In

2022年4月25日(月)18時59分
ブレンダン・コール

モルドバの沿ドニエストル地方との国境を監視するウクライナの国境警備兵(3月12日) Yevgeny Volokin-REUTERS

<ロシア軍高官がモルドバの親ロシア派地域「沿ドニエストル」まで支配下に収める計画を示唆。現状のロシア軍には難しいとの見方もあるが>

ロシア軍中央軍管区のルスタム・ミンネカエフ司令官代理は4月22日、ウクライナ南部からモルドバの沿ドニエストルに至る「陸の回廊」構築を目指していると示唆する声明を出した。これを受け、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ以外の欧州諸国にも侵攻を拡大するのではとの危機感が広がっている。

沿ドニエストルはモルドバ領内、ウクライナ国境とドニエストル川に挟まれた細長い地域だ。ロシア系住民が多く、ソ連崩壊後の1990年にソ連から独立したモルドバからの分離独立を一方的に宣言。これが武力紛争に発展し、ロシア軍の介入を招くこととなった。

1024px-Transnistria_in_Europe_(zoomed).svg.jpg
沿ドニエストルの場所(赤い部分) TUBS/Creative Commons

沿ドニエストルには今もモルドバ政府の支配は及んでおらず、1500人ほどのロシア軍部隊が「平和維持軍」として駐留している。ロシア政府は沿ドニエストルの独立を承認こそしていないものの、この「凍結された紛争」を使ってモルドバがNATOやEUとの関係を強化するのを食い止めてきた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はミンネカエフ司令官代理の発言について、ロシアのウクライナ侵攻は「始まり」に過ぎず、「その次には他の国々をわが物にするつもりである」ことを示していると述べた。

プーチン戦略の先の「可能性」

もっとも、ロシア軍による沿ドニエストルの制圧が可能かどうかについては議論もある。沿ドニエストルにたどり着く以前の問題として、ウクライナ南西部への侵攻がロシアの思うように進んでいないからだ。

ミンネカエフ司令官代理の見解がロシア政府の考えを反映しているのかどうかは分からない。だが一部の専門家からは、その種の攻撃を行う能力がロシアにあるのか疑問視する声も聞かれる。

この問題について、本誌では4人の専門家に意見を聞いた。

■ステファン・ウルフ(英バーミンガム大学教授、国際安全保障論)

「ロシアの勢力圏として、ロシアの超大国という地位の土台として、可能な限り旧ソ連を再構築しようというプーチンの戦略に合致するという意味で、可能性としては考えられるという程度の話だ」

「2014年以降にウクライナで起きたこと、そしてジョージアでこれまでに起きたことは、近隣諸国に対する影響力が弱まると、最終的に領土を奪うという(プーチンの)アプローチに合致している」

「そのアプローチをモルドバで使うには、今、プーチンが構築を望んでいるかも知れないつながった陸地が必要だ。その実現のためには軍事能力が必要だ。(だが)今のところ、ドンバスにおいてさえ、ロシアが大きな前進を遂げているようには思えない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏とサウジ皇太子が電話会談、OPECプラス

ワールド

イラン、米との会談巡り開催地変更と二国間協議を要求

ワールド

「グロック」、自主規制後も性的画像生成 管理不適切

ビジネス

これまでの米利下げ、雇用の健全性に寄与=リッチモン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 8
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 9
    少子高齢化は国防の危機──社会保障を切り捨てるロシ…
  • 10
    「耐えられない...!」アライグマをペットにしている…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中