最新記事

東南アジア

マレーシア、ミャンマー民主勢力と接触 世界の関心がウクライナに移り関係者に苛立ちも

2022年4月26日(火)19時22分
大塚智彦
ミャンマー軍政と民主化勢力の戦闘の衛星写真

3月15日に撮影されたモンユワ県チャウンウー郡の衛星写真。今もなお激しい戦闘が続いていることを示している。 REUTERS

<今もなお軍政と民主化勢力が戦闘を繰り広げるなか、自体打開の動きも>

マレーシア政府がミャンマーの反政府民主政権と接触していたことが明らかになった。ミャンマーでは2021年2月1日のクーデター以降、実権を掌握した軍政が、民主派組織や少数民族武装勢力との激しい戦闘を繰り広げ、実質的な内戦状態にある。

域内の安全保障問題としてミャンマーもメンバーである東南アジア諸国連合(ASEAN)が人道的見地から仲介に乗り出しており、今年のASEAN議長国であるカンボジアが何度かミャンマーを訪問して事態打開の道を探った。

しかしミン・アウン・フライン国軍司令官など軍政関係者との面会、会談に終始して、身柄を拘束されているアウン・サン・スー・チー氏をはじめとする民主政権幹部らとの面会は実現していない。

2021年4月24日にインドネシアが主導して同国ジャカルタで開催されたASEAN臨時首脳会議ではミン・アウン・フライン国軍司令官も出席して対面の会議で「5項目の議長声明」で合意した。

この合意の中には「武力行使の即時停止」や「ASEAN特使を受け入れ、関係者全員との面会」が盛り込まれている。しかし議長声明に合意したミャンマー軍政はこれまで「武力行使停止」は武装組織による攻撃が続いているとの理由で実現しておらず、「ASEAN特使を受け入れ、関係者全員との面会」についても公判中の容疑者との面会を許す国家などない、との理由で拒絶しており、仲介工作は頓挫しているのが実情だ。

業を煮やしたマレーシアが動く

議長国でアセアン特使でもあるカンボジアのプラク・ソコン副首相兼外相はこれまで複数回ミャンマー軍政と協議しているが3月の訪問でも軍政関係者と穏健派少数政党関係者以外との面会は実現できていない。

こうした行き詰った状況に動いたのがマレーシアだ。マレーシアはミャンマー軍政に対してはインドネシアやシンガポールなどとともに強硬姿勢を貫いており、親中路線でミャンマー軍政に強い姿勢をとれないカンボジアのASEAN議長国としての動きの鈍さに業を煮やしたものとみられる。

マレーシアのサイフディン・アブドラ外相は4月24日にツイッターで「非公式にミャンマーの反軍政民主政府である国民統一政府(NUG)関係者と面会したことがある」として、ASEAN外相として初めてスー・チー氏らが関係する組織の関係者と面会していたことを明らかにしたのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、15日にトルコで直接協議提案 ゼレンス

ビジネス

ECBは利下げ停止すべきとシュナーベル氏、インフレ

ビジネス

FRB、関税の影響が明確になるまで利下げにコミット

ワールド

インドとパキスタン、停戦合意から一夜明け小康 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦闘機を撃墜する「世界初」の映像をウクライナが公開
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    指に痛みが...皮膚を破って「異物」が出てきた様子を…
  • 6
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 7
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 8
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中