最新記事

中国社会

ロックダウンされた団地の公衆トイレに寝泊まりし掃除を続けた清掃員

2022年4月8日(金)18時20分
佐藤太郎

朝5時〜夜10時までの間トイレを掃除したリ・チュンツャオさん Photo:Handout

<公衆トイレで寝泊まりするなど避けたい人が多いはずだが、リ・チュンツャオさんは違った。団地の住民とボランティアのためにひたすらトイレの衛生を保った>

感染者や濃厚接触者が確認されたビルや店舗に閉じ込められ、隔離生活を送る人々......中国の「ゼロコロナ」の厳しさは、日本でもよく知られるところだ。お見合い相手の家でデート中に隔離期間に入り、その後結婚したカップルもいて、厳しい状況の中でも稀に微笑ましい話もある。

人口2500万人の上海市は、3月1日に確認された市中感染者はわずかに2人だったのが、その後1ヶ月あまりで急増している。8日に確認された新型コロナウイルス新規感染者は2万2122人で、6日連続で過去最多を更新している。広範なロックダウンと大規模検査が実施されているものの、それに伴って感染者の増加も続いている。

厳しい状況の続く上海のとある団地で清掃員として働くリ・チュンツャオさん。先月、清掃員として働く団地で新型コロナウイルスの感染者が確認され、出勤中だったリさんは職場である団地の敷地内での隔離生活を余儀なくされた。

期間は3月17日〜21日まで。しかも、リさんの働く団地に建つ2棟は1950年代に各家に専用トイレなしで建てられたため、公衆トイレは住民の生命線だった。その清掃をリさんは買って出た。隔離が始まると、医療関係者やボランティアも多く利用するようになった。

75df48e2-0cae-4255-a342-1ca20e3aea43_2cf6ceb3.jpg

団地の公衆トイレ 

彼女は仕事を放棄せずに、朝5時〜夜10時までの間、30分おきにトイレを掃除し消毒していたという。

食事の調達は同僚や地域住民に頼み、夜は同僚が送ってくれたリクライニングチェアに毛布をかけて寝る。防護服などの差し入れもあったそうだ。そして起きたらひたすらトイレを清潔に保ち続けた。

公衆トイレでの日々を振り返り、「夜は大雨で異臭が漂い、蚊取り線香を焚いて寝ました。最初の晩は寒くて眠れず、変な気分でした」と、リ・チュンツャオさん。「でも、誰かがやらなければならないことに気づいたんです」

彼女は、中国の新型コロナウイルスとの闘いにおいて、自分には果たすべき役割があると思いながらも、いざ自分がその渦中に置かれ大きな不安を感じたと心境を明かしている。


<関連記事>
【動画】上海のスーパーで食料めぐり男たちが「大喧嘩」、ロックダウン目前のパニック
我慢の限界!外出禁止中の中国・西安当局を動かした、市民「激怒の行動」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIとの合弁設立が大幅遅延

ワールド

韓鶴子総裁の逮捕状請求、韓国特別検察 前大統領巡る

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ビジネス

首都圏マンション、8月発売戸数78%増 価格2カ月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中