最新記事

ルポ

子供たちが狙い撃たれ、遺体は集団墓地に積みあがる...孤立都市マリウポリの惨状

Barbarity Laid Bare

2022年3月23日(水)17時20分
ジャック・ロシュ(ジャーナリスト)

両親とはわずかな時間、連絡が取れる。しかし、つかの間の安心の後、毎回悲しみと不安に襲われた。

「みんな生きているのか、食べ物や水は足りているのか、家は壊れていないのかと私は聞いた。あるとき電話で私が泣きだすと、母が強くなりなさい、冷静になりなさいと言った。母はとても強い女性で、私のお手本。でも、彼女も泣きだしてしまった。『ここでは耐えられないことが起きているから、みんなに伝えてほしい』と言って」

ロシア軍への怒りと悲しみと侮蔑

首都キエフに住むジミトリー・ハルコ(42)は、元パートナーと6歳の息子が生きているか分からずにいる。「マリウポリからの断片的な知らせは恐ろしいものばかりだ。もう14日間、連絡がない」

ハルコはネットで必死に情報を探し、友人や親族と連絡を取りながら、侵攻してくるロシア軍に対する悲しみと怒りと侮蔑を吐露する。

「生きていてほしい。そうでなければ私は壊れてしまう。そして、それが人生の分岐点になるかもしれない。自分がレジスタンスに加わるかどうか、考えなければいけない。許すことはできないだろう」

今はただ、住宅が完全に破壊され、冷たい大地が遺体で埋め尽くされるなか、マリウポリを最もよく知っていて最も愛する人々は、繰り広げられる悪夢を眺めている──むごたらしく破壊されたこの町を、いつか再建するという遠い希望を心の支えに。

「私の最も幸せな記憶はマリウポリにある」と、ポポワは言う。「完全に破壊された町を見ていると......悪夢だ。すぐにも行きたいけれど、今は我慢するしかない。いずれ誰かが町を再建しなければならないから。そして、それができるのは私たちだから」

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャーによる株買い増し、「戦略に信任得てい

ビジネス

スイス銀行資本規制、国内銀に不利とは言えずとバーゼ

ワールド

トランプ氏、公共放送・ラジオ資金削減へ大統領令 偏

ワールド

インド製造業PMI、4月改定値は10カ月ぶり高水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 8
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中