最新記事

亡命

対立するロシアとウクライナでも亡命希望者たちは協力、メキシコ経由で米国目指す

2022年3月11日(金)17時54分
ロシアの反体制派のドミトリー・ズバレフ氏

メキシコを目指すロシア人、ウクライナ人が増えつつある。 そこでスクラップ同然の車を買い、国境を越えて米国に入り、亡命を申請する。ロシアのウクライナ侵攻によって100万人以上が母国からの逃避を余儀なくされている状況で、こういったケースはさらに増えそうだ。写真はロシアの反体制派で、メキシコ経由で米国へ入り亡命を希望しているドミトリー・ズバレフ氏。3月4日、米コネチカット州で撮影(2022年 ロイター/Michelle McLoughlin)

メキシコを目指すロシア人、ウクライナ人が増えつつある。そこでスクラップ同然の車を買い、国境を越えて米国に入り、亡命を申請する。

ロシアのウクライナ侵攻によって100万人以上が母国からの逃避を余儀なくされている状況で、こういったケースはさらに増えそうだ。

米国税関国境警備局(CBP)のデータによれば、2021年10月から今年1月までの4カ月だけで、国境管理官が対応したロシア人は約6400人。21年度(―9月30日)の年間約4100人をすでに超えている。ウクライナ人も同様に急増しており、21年10月以降1月末までに1000人強が拘束された。前年度は、通年で680人ほどだった。

CBPの統計では、22年度の最初の数カ月間に米国国境で拘束されたのは67万人であり、こうしたロシア人、ウクライナ人の移民はごく一部を占めるにすぎない。

足止めされた人々の大部分はメキシコおよび中米諸国の出身で、すぐに国外退去となった。だが、ロシア人とウクライナ人についてはほぼ全員が亡命審査中の滞在を許可されており、こうした新規入国者の支援を目的とした国境周辺の保護施設で目立ち始めている。

6月以降、サンディエゴの保護施設に収容された人々の国籍別上位3カ国には常にロシアの名があった。非営利組織(NPO)、弁護士、地域リーダーの提携組織であるサンディエゴ・ラピッド・レスポンス・ネットワークが公表したデータだ。前の週には、ウクライナも第3位に入った。

CBPのデータには、ロシアのウクライナ侵攻が始まった2月24日以前に到着した移民しかカウントされていない。だが、匿名を条件に取材に応じた現役の国境管理官と元管理官は、両国間の戦闘激化により、亡命希望者の数も激増する可能性があると語った。

ロシアが「特殊軍事作戦」と称して戦車、歩兵部隊、ミサイルによる猛攻撃を加える中、ウクライナからはすでに100万人を超える人々が出国した。大半は近隣の欧州諸国に向かったが、これほどの規模とペースで集団脱出が進めば、受け入れる欧州諸国には多大な負担がかかり、一部はさらに遠隔地へと押し出される可能性が高い。

国境に殺到するロシア・ウクライナ移民

ロシアのプーチン大統領は、戦争に反対する抗議参加者を拘束し、独立系報道機関を閉鎖することにより、国内反体制派に圧力をかけている。西側諸国による強力な経済制裁はすでにロシア国民に打撃を与えており、出国への圧力はさらに高まっている。

ウクライナとロシアの移民希望者は、亡命申請のためにメキシコ経由で米国南部国境を目指す方法について、ソーシャルメディア上でノウハウを共有している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン氏、ガザは「人道危機」 学生の怒りに理解

ワールド

中国、日米欧台の工業用樹脂に反ダンピング調査 最大

ワールド

スロバキア首相銃撃事件、内相が単独犯行でない可能性

ビジネス

独メルセデス、米アラバマ州工場の労働者が労組結成を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中