最新記事

ウクライナ情勢

プーチンが怖れるNATOの核抑止戦略

B-52s Patrol Europe as US Touts Ironclad Defense After Russia Nuclear Alert

2022年2月28日(月)18時28分

米軍のB52爆撃機をエスコートするウクライナ空軍のミグ29戦闘機(2020年) Ukraine's Armed Forces/REUTERS

<核保有国であるなしを問わず核兵器の運搬を担えるNATOの態勢がプーチンの恐怖心の根源にある>

米軍のB52戦略爆撃機がNATOの東端に近い地域へと派遣され、ロシアが核戦力のことと思われる「核抑止部隊」を高度な警戒態勢に置く中で、米国防総省はNATO加盟国の防衛に積極的に関与する姿勢を強調した。

ロシア軍がウクライナの首都キエフ周辺まで侵攻して米ロの緊張が高まる中、アメリカとNATOの核抑止に関する原則はどんな影響を受けるのか、本誌は国防総省高官に尋ねた。

「(NATOの基本条約である北大西洋条約)第5条にある集団防衛は、軍事能力の全領域を通して今も鉄壁だ」と同高官は述べた。

「集団防衛」の原則を定める第5条には「1つの締約国への攻撃は全締約国への攻撃とみなす」と書かれている。NATOのウェブサイトによれば今回、「シリア情勢とウクライナに対するロシアの攻撃」に対して第5条が発動されたが、これは01年の同時多発テロ以来初めてのことだという。

このNATOの発表が行われたのは、プーチンがロシア軍に対し「核抑止部隊に高度警戒態勢」をとるよう命じたのと同じ日だった。プーチンはこうも述べていた。「NATOの指導的立場の国々の高官はわが国に対し攻撃的な発言をすべきでない」

NATO事務総長は「危険なレトリック」を非難

NATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長はプーチンの発言を「危険なレトリック」と非難するとともに、ロシア軍の動きを「無責任」だと一蹴した。また、ジェニファー・サキ米大統領報道官は、ロシア政府が「さらなる攻撃を正当化するためにありもしない脅威をでっち上げた」と非難した。

プーチンに言わせれば、ウクライナがNATO加盟や核兵器保有を目指すことによりロシアの国家安全保障を脅かしたことが今回の侵攻の理由だ。だがアメリカとNATO加盟国はそんな「口実」を一蹴する。

2月に入ってアメリカ政府がロシアによるウクライナ侵略が差し迫っていると警告し、ロシアがそうした計画はないと主張して緊張が高まる中、アメリカはB52戦略爆撃機をイギリスに派遣していた。

それから約1週間後、プーチンはロシアの「戦略的核抑止部隊」に対し演習を命じた。この抑止部隊には、ロシアの核攻撃能力を構成する3要素(戦闘機、戦艦と潜水艦、弾道ミサイル)が含まれている。

ロシアがウクライナへの攻撃を始めた後も、アメリカはB52を直接、NATOの東端に送り込み、北極海やバルト海、ポーランド上空で作戦を実施した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、メンフィスで法執行強化 次はシカゴと表

ワールド

イスラエルのカタール攻撃、事前に知らされず=トラン

ワールド

イスラエル軍、ガザ市占領へ地上攻撃開始=アクシオス

ワールド

米国務長官、エルサレムの遺跡公園を訪問 イスラエル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中