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人権問題

ロシア最高裁、人権団体「メモリアル」に解散命令 米独など非難

2021年12月29日(水)14時54分
モスクワでプラカードを掲げる「メモリアル」の支持者

ロシア最高裁は、ロシアの人権団体「メモリアル」の解散を命じた。写真はモスクワでプラカードを掲げる、「メモリアル」の支持者(2021年 ロイター/Anton Vaganov)

ロシア最高裁は28日、ロシアの人権団体「メモリアル」の解散を命じた。ロシア当局は2015年に同団体を「外国のエージェント(代理人)」に指定しており、これに伴う法律に違反したとして解散を命じた。メモリアルは活動を継続するために法的な手段を模索するとしている。

メモリアルは旧ソ連のゴルバチョフ元大統領が推し進めた「グラスノスチ(情報公開)」時代に設立。ノーベル平和賞を受賞した物理学者の故アンドレイ・サハロフ氏も設立に関与しており、1937─38年のスターリンによる大粛清を含む政治抑圧を記録してきた。1990年代のチェチェン紛争ではロシアの主な人権団体として活動したほか、最近ではプーチン政権による抑圧に対抗し、メモリアルが「政治犯」と認識する人のリストを公表するなどしていた。

検察官は裁判で、メモリアルは旧ソ連が「テロリスト国家」だったかのような誤ったイメージを拡散したほか、第2次世界対戦中の旧ソ連の行動の記憶を汚したと非難。メモリアルのこうした裏切り行為に「誰か」が資金を提供していたとした。

メモリアルは国外から資金提供を受けている事実を明らかにしており、ウェブサイトには、ポーランド、ドイツ、カナダ、チェコなどから資金を得ていると掲載。当局はこうしたことを根拠にメモリアルを「外国の代理人」に指定している。

メモリアルに解散命令が下されたことに対し、国際人権団体のほか米独などが非難。米国務省のプライス報道官がロシア当局に対し人権保護者の抑圧をやめるよう呼び掛けたほか、ドイツ外務省報道官も解散命令は「理解し難い」とし、深刻な懸念を表明した。

[ロイター]


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