最新記事

北朝鮮

公用車も買えず、出国はトロッコで...北朝鮮で暮らす各国外交官のリアルな日常

The Life of Diplomats in North Korea

2021年12月10日(金)13時16分
コラム・リンチ(フォーリン・ポリシー誌外交問題担当)

211214P30_KIT_03.jpg

イギリス、ドイツ、スウェーデンの大使館が共同で入居する平壌の建物 GSALOMONSSON VIA WIKIMEDIA

シリア政府は、平壌の大使館がコンピューターやコピー機など基本的な事務機器の購入に苦労していると訴えた。「現地では自動車やその部品を購入することも、外国で購入した車の部品やメンテナンス用品を見つけるのも難しい」と、駐北朝鮮シリア大使館は国連宛ての書簡に記している。「地元民以外の外国人が好むような食品は、現地の市場にはない」

さらにシリア大使館は「制裁によって、外交官の活動が困難になっている」と訴えた。「ここには国際航空会社のオフィスはなく、運航便もない。旅行会社もない。......贅沢品、特に消費財、必要不可欠な家財道具、電気・電子機器などは見当たらない。入手できたとしても、非常に高価だ」

情報も展望もない毎日

これらの証言が浮き彫りにするのは、日常のあらゆる面を縛る政府の統制と、制裁による広範な経済活動の制限という二重苦に陥った国で外交活動を行う難しさだ。

ただし、それが全ての国に当てはまるわけではない。イギリスやドイツ、イタリアなど平壌に駐在する欧州の外交官は、制裁が外交に及ぼす影響はそれほど重くみず、北朝鮮当局による官僚的な制約の行きすぎを強調していた。

当時の駐北朝鮮ドイツ大使ゲルハルト・ティーデマンは、11年12月9日に国連の制裁専門家の集まりを主催。高級品の購入を禁止する法律があっても、エリート層が18年物のウイスキーを購入するのを妨げない国で、欧州の外交官がどう暮らしているかを語った。

北朝鮮当局者は外国人との交流が禁止されており、欧州の外交官と接触する機会はほとんどない。ティーデマンが会った北朝鮮の当局者も、外務省の欧州担当部長くらいだ。

ドイツの外交官が人道支援プロジェクトの視察のため地方に行こうとすると、許可証と政府当局者の同行が必要だと言われた。寧辺の核施設を視察したいという要請は常に退けられた。さまざまな手続きなしには「中国国境まで近づくことも許されなかった」と、この内部文書にはある。

平壌にいると、北朝鮮に核技術を提供した疑いがあるイランを含む他の制裁対象国との密な関係を目にする機会がある。ティーデマンによれば、イラン大使は平壌で実に積極的に動いており、空港では相当数のイラン人を目撃できた。

ティーデマンがイラン大使と会ったとき、大使は聞かれてもいないのに「北朝鮮とは経済的、文化的問題に関して協力関係にある」と話し始め、「だが核問題での協力は絶対にない」と断言した。

モノもなければ、情報もない。そして将来への展望もない。北朝鮮駐在の外交官の毎日は、こうして過ぎていく。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 総力特集:ベネズエラ攻撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月20号(1月14日発売)は「総力特集:ベネズエラ攻撃」特集。深夜の精密攻撃で反撃を無力化しマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ大統領の本当の狙いは?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ベネズエラ、今月初めの米軍による攻撃で兵士47人死

ワールド

EU、重要インフラでの中国製機器の使用を禁止へ=F

ワールド

イラン抗議デモ、死者3000人超と人権団体 街中は

ワールド

韓国、米のAI半導体関税の影響は限定的 今後の展開
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 5
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 6
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中