最新記事

北朝鮮

北朝鮮が支援国・中国からの入国を徹底して禁止せざるを得ない事情

North Korea Refusing Entrance to Chinese Diplomats, Building Guard Posts Along Border

2021年7月9日(金)18時12分
ゾーイ・ストロゼウスキ
北朝鮮の金正恩

KCNA-Reuters

<同盟国で援助国でもあるはずの中国の外交官さえ入国させない姿勢。一方で政府の体制と金正恩の体形にも変化が>

北朝鮮は最近、中国外交官の入国を禁止したようだ。韓国の諜報機関が報告した。さらに、あらゆる違法な越境を阻止するため、国境沿いに監視所やコンクリート構造物を建設しているという。韓国の国家情報院(NIS)は7月8日、韓国の議員たちに向け、北朝鮮が中国人の入国を阻止していることについて非公開で説明したとAP通信は報じている。

説明会に出席した議員の一人、河泰慶(ハ・テギョン)によれば、北朝鮮はまだ外国製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを入手していない模様だということも、NISは明らかにしたという。最高指導者の金正恩がワクチン接種を受けた形跡もない、と河は述べている。

COVID-19ワクチンを全世界に配布することを目的とした国際連合支援のプログラムCOVAXは2月、北朝鮮は2021年前半に190万回分のワクチンを受け取る資格があると発表したが、北朝鮮から出荷の依頼はなかった。

北朝鮮は世界有数の秘密主義国家であり、その動向に関するNISの報告は、これまで全て正しかったわけではない。政府と無関係な専門家のなかには、金正恩とその側近は、非公式なルートで輸入されたワクチンを使用したのではないかと推測する者もいる。

説明会に出席した別の議員、金炳基(キム・ビョンギ)はNISからの説明として、北朝鮮政府は、外国からワクチンが届くのではないかという国民の期待を打ち消し、ウイルスに対する警戒を強化するよう促していると語った。

コロナ対策の失敗で高官たちを叱責

金炳基はさらに、ウイルス対策の一環として違法な越境を阻止するため、中国との国境沿いに監視所やコンクリート構造物を建設していると述べた。金炳基によれば説明会では、北朝鮮は主要な同盟国であり援助国でもある中国の外交官の入国さえも認めていないという報告もあったそうだ。

金正恩は最近、新型コロナウイルス対策の「重大な」失敗が「大きな危機」を招いたとして、高官たちを非難した。しかし北朝鮮政府は、自国領土にウイルスを入れたことはないと主張し続けており、外部の専門家から広く疑問視されている。

世界保健機関(WHO)の発表によれば、北朝鮮は6月24日までに3万1794人の検査を行い、すべて陰性だったと報告している。

金正恩は最近の演説で、国民に対して、COVID-19関連の規制が長期化することに備えるよう呼び掛けた。長年の失政と、核開発を巡る米国主導の制裁によってすでに壊滅的な打撃を受けていた経済が、COVID-19によってさらに大きな痛手を負っているにもかかわらず、北朝鮮はまだ国境を開くつもりがないことを示唆している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRBが金利据え置き

ビジネス

FRB、5会合連続で金利据え置き トランプ氏任命の

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の会見要旨

ワールド

銅に50%関税、トランプ氏が署名 8月1日発効
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中