オミクロン株発見の衝撃 南アフリカの研究者には国内から批判も
他の一般的な変異株の中で、この特徴を有するのはアルファ株だけだ。「しかも(南アでは)8月以来、アルファ株を目にしていなかった」と、アモアコ氏のチームの一員、ジョジー・エベラット氏は振り返る。
11月23日までには、ヨハネスブルクおよびプレトリア一帯で採取したサンプル32件を追加検査し「疑いの余地はなくなった」とアモアコ氏は言う。
「恐ろしかった」──と。
情報隠ぺいの恐れ
同じ23日、NICDのチームはゲノム解析を行っている国中の検査機関にこの結果を報告し、これらの機関でも同様の結果が出始めた。
同日、NICDは国際的なウイルス情報共有機関・GISAIDのデータベースに検査結果を入力し、ボツワナと香港でも同じ遺伝子配列の事例が報告されていることを知った。
翌24日、NICDの幹部らと部局は、世界保健機関(WHO)に報告を上げた。
バイアナ氏によると、このころにはプレトリアやヨハネスブルクが含まれるハウテン州では、陽性確認者の3分の2以上でS遺伝子ドロップアウトが見られていた。オミクロン株が既に支配的な株になっていたことを示す兆候だ。
南ア屈指の感染症専門家、サリム・アブドゥール・カリム氏は11月29日、オミクロン株が原因で同国の新規感染者数は週末までに4倍の1万人以上に増えるとの見通しを示した。
残る重要な疑問点は、1)オミクロン株がワクチンや過去の感染による免疫機能をすり抜けるか、2)既存株に比べてどの程度の重症化を招くか、3)年齢層によって重症度が異なるか──などだ。
ロイターが取材した科学者3人は、これらの疑問が3、4週間中に解明されると予想している。
一方、南アでは諸外国の渡航禁止措置に対して大きな怒りがわき起こっており、一部は科学者にも向けられている。アモアコ氏の元には、新株の調査をやめるべきだった、という怒りのメッセージがいくつか寄せられた。
新型コロナ研究に取り組むステレンボッシュ大学のウイルス学者、ウォルフガング・プリーザー氏も憎悪のメールを受け取った。同氏は、諸外国が今回のてん末を教訓に、情報公開に及び腰になる可能性を懸念している。
「他の国々が事実を隠したり、いっそのこと検査を控えたりする動機になるかもしれない。それが怖い。検査には相当な投資が必要なのだから、『わざわざ検査するのは止めておこう』となるかもしれない」とプリーザー氏は案じた。
(Tim Cocks記者)

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