最新記事

日本外交

展望2022・日本の安全保障 台湾問題など高い緊張、中国の「嫌な外交」続く

2021年12月29日(水)12時44分
台湾の旗

日朝国交正常化交渉で日本政府代表を務めた元外交官の美根慶樹・平和外交研究所代表は、ロイターとのインタビューで、日本の安全保障を取り巻く環境について、台湾問題を中心に中国と米国の緊迫したやりとりが続くとの見通しを示した。写真は台湾の旗。10月に桃園で撮影(2021年 ロイター/Ann Wang)

日朝国交正常化交渉で日本政府代表を務めた元外交官の美根慶樹・平和外交研究所代表は、ロイターとのインタビューで、日本の安全保障を取り巻く環境について、台湾問題を中心に中国と米国の緊迫したやりとりが続くとの見通しを示した。軍事衝突はないとみるが、中国は米国の神経に触る「嫌な外交」を継続するとした。

国際機関で中国が存在感

美根氏は現在の米中関係について、中国が米国に強い姿勢で臨んでいるため、バイデン政権は「中国が将来的に台湾を攻撃すると言わざるを得ない状態」と解説。「外交的に中国流の嫌なことを続けるだろう」とし、日本の外交・安全保障環境は「高いテンション(緊張)が来年も続く」とした。

具体的には、中国が国際機関の要職獲得などを通じて国際世論を味方につける施策を引き続き進めるとみる。中国は15ある国連専門機関のうち、国際電気通信連合(ITU)、国連食糧農業機関(FAO)、国連工業開発機関(UNIDO)でトップを占めており、国際民間航空機関(ICAO)も前任のトップが中国出身だった。 美根氏は「いつの間にか4つもの国際機関トップに中国人が送り込まれており、米国はかりかりしている」と述べた。

西側諸国の一部で中国による台湾侵攻への懸念が強まっているが、美根氏は「台湾が一方的に独立宣言するようなことがなければ、中国が手出しをすることはない」との見方を示した。共産党政権による実力組織の統制は「しっかりしていると思う」とし、軍などが「暴発する可能性は少ない」と述べた。一方で、尖閣諸島(中国名:釣魚島)周辺などで中国船が特異な動きをみせることがあることから、「完全にコントロールされていると思えないところもある」とした。

美根氏は自身の体験を踏まえ、「(中国の)王毅外相は非常に物分かりの良い人物であるにもかかわらず、対外的には非常に(激しい言葉使いで)やり合うことがあり、軍を意識して歌舞伎をやっている」との見解を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産が追浜工場の生産終了へ、湘南への委託も 今後の

ビジネス

リオ・ティント、鉄鉱石部門トップのトロット氏がCE

ワールド

トランプ氏「英は米のために戦うが、EUは疑問」 通

ワールド

米大統領が兵器提供でのモスクワ攻撃言及、4日のウク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中