最新記事

中国

女子テニス選手と張高麗元副総理との真相──習近平にとって深刻な理由

2021年11月23日(火)15時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

文章を詳細に読めば、彭帥が「話し合いをドタキャンした張高麗に憤り、その憤懣をぶつけている様子」が、ありありと浮かび上がってくる。ドタキャンしたのは張高麗夫人が「いい加減でやめてくれ!」と怒ったからだろうと推測される。

告発は「反習近平派が起こした権力闘争」とする一部の「専門家」の非常識

この切々として、乱れている告白文に関して、「反習近平の一派が、彭帥の振りをしてネットで告発する形を取った権力闘争の可能性がある」という趣旨の解説を、大手メディアのニュース番組でした「中国問題の事情に詳しい専門家」らしい人がいるのを知り、呆気に取られた。

中国問題を知らないにも、ほどがある。

もしそのようなことをすれば発信元を一瞬で調べ上げて犯人を逮捕できるのが中国の監視体制だということさえ知らないのだろうか。

おまけにそういうことであるなら、当局は何も彭帥の姿を消す必要はなく、堂々と彭帥に「あれは誰かの陰謀で自分は書いていない」と言ってもらえれば済むことだ。それだけでも論理矛盾を来たしている。

その「中国問題の事情に詳しい専門家」らしい人の解説が、いかにインチキであるかを証拠立てる経験を、私は天津でしている。

生涯言わないつもりだったが、このような、何でも権力闘争に持って行って中国の真実を見えなくしてしまう連中を、そのままにしてこの世を去るのも無責任かもしれない。

思い切って、張高麗が天津市の書記だった時の「秘密」をここに明かしたい。

2012年、張高麗に関する芳しくない「秘密」が

あれは2012年の春ころのことだった。まだ胡錦涛政権だったので、言論弾圧がそれほど厳しくはなく、私はわりあい自由に日本と中国を行き来していた。

筑波大学の教え子で、中国に帰国したあと天津で不動産開発事業を手掛けていた青年がいる。彼は熱心に私を天津から車で迎えに来ては、北京国際飯店に宿泊していた私を天津に連れて行き、彼の建てたマンション群を私に見せたがった。

私が天津で育ち、天津には思い入れが深いのを知っていて、1953年に私が天津と別れを告げた港、塘沽(タングー)が、今や浜海新区として栄えているさまを見せてくれたりもした。同時に天津市政府の高官らに私を紹介したりしていたので、「こういうレベルの人たちと付き合っているんだ」と、母校の教授に知らせたいという、やや誇らしい気持ちもあったようで好ましく受け止めていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中