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台湾防衛? バイデンの「火遊び」に肝を冷やすワシントン

China Urged Republicans to Cancel Taiwan Visit

2021年11月16日(火)17時31分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)
習近平とバイデン

習近平国家主席(左)バイデン米大統領 Pavel Golovkin-REUTERS、Jonathan Ernst- REUTERS

<台湾との接触を加速させるバイデン政権に警戒感を募らせているのは中国だけではない>

11月上旬、中国の「裏庭」にある3つの国・地域への外遊の準備をしていた米共和党の議員団の元に、在米中国大使館からあるメッセージが届いた。上院議員4人、下院議員2人で構成される同議員団が台湾などを訪れることを知った中国の外交官が、事実上「行くな」と言ってきたのだ。


テキサス州選出のジョン・コーニン上院議員が率いる議員団に同行した、同州選出の新人で元海軍パイロットのジェイク・エルジー下院議員は、「我々の知る限り、中国大使館がアメリカの連邦議員に対してこのような言葉を使ったことはない」と語った。「彼らのメッセージは脅しではなかったが、外遊の中止を促すものだった。『非難する』という言葉はなかったものの、外遊を非難していたのは明らかだった」

問題のメールは、離陸直前にエルジーの補佐官の元に届き、議員団のほかのメンバーたち――コーニン、トミー・タバービル上院議員、マイク・リー上院議員、マイク・クラポ上院議員、それにアンソニー・ゴンザレス下院議員――と共有された。エルジーによれば、メールの中で中国の当局者たちは、議員団の外遊は「アメリカが『一つの中国』の原則を尊重すると言っていることや、台湾が中国の一部であるという事実」を脅かすと主張した。

「アメリカの立場は変わっていない」

議員団は中国政府に対して、事前に外遊を行うことを通知していた。だが中国共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙「環球時報」は、米議員団が軍用機で台湾を「秘密裏に訪れた」とセンセーショナルに報じ、アメリカの外交使節団が台湾に擦り寄っていることを示す一例だと主張した(議員団は米海軍の貨物機で台湾を訪問した。過去の複数の米代表団も同じような方法で台湾を訪問している)。

11月14日に外遊を終えて帰国したエルジーは、「彼らは私たちのことを卑劣な裏切り者呼ばわりした」と語った。「彼らがアメリカについて、きちんと下調べをしていないことは明らかだ。私たちは台湾と協力関係にある。これまでと立場を変えた訳ではない」

だが一部の有識者は、この一件のせいで、台湾防衛に力を入れろというバイデン大統領への圧力がますます高まるのではないかと懸念している。共和党のトム・ティリス上院議員とマイク・ギャラガー下院議員が率いる少数の共和党議員グループはホワイトハウスに対して、台湾について40年前から続いている「戦略的曖昧」政策を保留にするよう求めている。今回の議員団の外遊により、その圧力がさらに高まるおそれが強まっている。

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