最新記事

米中関係

台湾防衛? バイデンの「火遊び」に肝を冷やすワシントン

China Urged Republicans to Cancel Taiwan Visit

2021年11月16日(火)17時31分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)

カーネギー国際平和財団の上級研究員であるスティーブン・ワートハイムは、フォーリン・ポリシー誌に宛てたツイッターのダイレクト・メッセージの中で、「既存の戦略的曖昧政策はアメリカと台湾にとってうまく作用してきた。少数の共和党議員団による今回の台湾訪問は、その戦略的曖昧政策を骨抜きにし、現状維持を脅かす動きのひとつに思える」と指摘した。「台湾防衛を訴える議員たちは、地元選挙区に戻って有権者に尋ねてみるべきだ。アメリカが自国民の命と繁栄を大きく損なう危険を冒して、世界第2位の大国に戦争を仕掛けるようなことが、本当にアメリカの利益になるのかと」

アメリカの代表団による非公式な台湾訪問は、ドナルド・トランプ前政権時代から複数回にわたって行われており、中国軍はこれを「現状を悪化させようと狙う米政府の試み」と解釈しているようだ。また米国防総省は、中国の習近平国家主席が任期を延長するのは台湾問題を解決(つまり台湾統一)することが狙いだと見ている。

米軍特殊部隊と米海兵隊を台湾に派遣

さまざまな議論はあるが、上院民主党のある側近はフォーリン・ポリシーに対して、バイデン政権は、戦略的曖昧政策を変えるようにという深刻な圧力は一切感じていないと語った。民主党内の進歩主義者たちは同政策の維持を強く求めており、また中国による台湾侵攻を阻止するために、バイデンが米軍を投入するのは回避したいと考えている。

「そのような関与は避けるのが賢明だと思う。我々にはその目的を果たす準備ができていないからだ」と前述の側近(匿名希望)は述べた。「我々が総力を挙げて中国の台湾侵攻を阻止するかのように振る舞うのはやめよう。一方でアメリカは、台湾の自衛を積極的に支援する。そのことを明確に示していくべきだ」

だが連邦議会の進歩主義者たちはそれでも、台湾問題については、武力に基づく威嚇的な姿勢がワシントンの新たな常識になるだろうと懸念している。「進歩主義者たちが目指すのは、『誰が中国に対してより強硬姿勢を取れるか』というようなお決まりのくだらない議論に巻き込まれずに、いかにしてこの問題についての賢明な議論を行うかということだと思う」と、前述の上院民主党の側近は語った。

だが一部党内の不安の声をよそに、バイデンはトランプ前政権に続いて、米軍特殊部隊と米海兵隊を台湾に派遣している。これらの部隊は、台湾が中国による侵攻の脅威を阻止する準備を行い、中国軍が上陸を果たした場合には武力での抵抗を続けるための手助けを行っている。米国防総省の国防人員データセンターによれば、6月時点で現役勤務部隊30人と国防総省の文民スタッフ15人が台湾で任務に就いていたということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナを大規模攻撃、3人死亡 各地で停

ワールド

中国、米国に核軍縮の責任果たすよう要求 米国防総省

ビジネス

三井住友トラスト、次期社長に大山氏 海外での資産運

ビジネス

台湾の11月輸出受注、39.5%増 21年4月以来
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中