最新記事

米中関係

台湾防衛? バイデンの「火遊び」に肝を冷やすワシントン

China Urged Republicans to Cancel Taiwan Visit

2021年11月16日(火)17時31分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)

中国の侵略者たちにとって台湾を「より狙いにくい標的」にするために、戦闘機などの大型プラットフォームではなく高速艇や移動式のミサイル発射装置の購入を勧めたアメリカ側の提案を、台湾の当局者たちは受け入れたとタバービルは語った。「戦車は水に浮かない。ただ新たな標的になるだけだ」と、タバービルは15日に行った記者会見で記者団に語った。

そして共和党議員団の訪台は、台湾との(直接的ではないにせよ)実務外交の傾向を継続させるものだ。2020年8月にはアレックス・アザー保健福祉長官(当時)が台湾を訪問し、2021年1月の大統領交代の直前には、ケリー・クラフト米国連大使が台湾訪問を予定していたものの、見送られた。だがバイデン政権になって以降、台湾との非公式な接触は加速し続けている。4月には大統領の個人的な依頼により、クリス・ドッド元上院議員が率いる米代表団が台湾を訪問。6月には、バイデンの盟友であるクリス・クーンズをはじめとする米上院の超党派議員団が台湾の蔡英文総統と会談し、台湾にファイザー製の新型コロナウイルスワクチン75万回分を供与すると表明した。

一部の専門家は、こうした非公式の訪問が、リチャード・ニクソン政権時代から続く「一つの中国」の原則を脅かすものだと、強い懸念を表明する。

懸念を募らせる同盟諸国

米ブラウン大学ワトソン国際公共問題研究所の上級研究員で、ビル・クリントン政権時代に国防次官補を務めたチャス・フリーマンは、「破滅のきっかけとなる要素が積み重ねられている」と語る。「まだ決定的な事態には至っていないが、そこに近づきつつある」

コーニン率いる共和党議員団の訪台は、同盟諸国が、アジアにおける中国の拡張主義に懸念を募らせているタイミングで行われた。11日には、米インド太平洋軍司令官のジョン・アキリーノが、台湾から約100キロのところにある日本最西端の島、与那国島を訪問し、日本の自衛隊トップと会談を行った。定期的に行われるこうした訪問や会談は、同盟諸国との結束を誇示するものだ。

インドやフィリピンにも立ち寄った今回の外遊で、諸外国の当局者から受け取ったメッセージは明確なものだったと議員団は語った。そのメッセージとは、中国の台頭が地域全体の問題になりつつある、というものだ。

外遊に参加した共和党の新人議員エルジーは、「ウラジーミル・プーチンがロシアの終身大統領になるとは誰も予想していなかった。それと同じように、習近平が中国の終身国家主席になることを予想していた人もいなかったと思う」と述べた。「だからみんなが少し神経を尖らせているのだと思う。インドの外相が言っていたとおり、『これは台湾問題ではなく、中国問題』なのだ」

From Foreign Policy Magazine

20240604issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年6月4日号(5月28日発売)は「イラン大統領墜落死の衝撃」特集。強硬派ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える グレン・カール(元CIA工作員)

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

新技術は労働者の痛み伴う、AIは異なる可能性=米S

ワールド

トランプ氏不倫口止め裁判で最終弁論、陪審29日にも

ワールド

多数犠牲のラファ攻撃、イスラエルへの軍事支援に影響

ビジネス

温暖化は米経済に長期打撃、資本ストックや消費押し下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 8

    なぜ「クアッド」はグダグダになってしまったのか?

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中