インドがパキスタンの「テロ拠点」攻撃、26人死亡 情勢緊迫

5月7日、 インドはパキスタンと係争地カシミール地方のパキスタン支配地域にある計9カ所の「テロリストのインフラ」を攻撃したと発表した。写真は攻撃についてニューデリーで記者会見するインドのミスリ外務次官(2025年 ロイター/Priyanshu Singh)
By Asif Shahzad, Shivam Patel
[ムザファラバード(パキスタン)/ニューデリー/北京 7日 ロイター] - インドは7日、パキスタンと係争地カシミール地方のパキスタン支配地域にある計9カ所の「テロリストのインフラ」を攻撃したと発表した。今回は、主要都市ラホールを擁する最も人口が多いパンジャブ州が、約半世紀前の第3次印パ戦争以来、初めて攻撃対象となり、両国が領有権を争うカシミール地方で4月に発生した観光客襲撃事件を受けた緊張が極めて深刻な状況に発展した。
インド政府は声明で「インド軍は『シンドール作戦』を開始し、パキスタンとパキスタン占領下のジャム・カシミールにあるテロリストのインフラを攻撃した。これらの場所からインドに対するテロ攻撃が計画され、指示されてきた」と表明。事態のエスカレートを避けるためにパキスタンの軍事施設は標的にせず、作戦を実行するに当たり「相当の自制を示した」と主張した。
パキスタン政府は武装勢力の拠点ではない6カ所が攻撃され、3カ所にミサイルが撃ち込まれたと主張。パキスタン軍によると、少なくとも民間人26人が死亡し46人が負傷した。
パキスタン政府は、インドが「この地域で烈火を引き起こした」とし、「罪のないパキスタン人の命の損失と明白な主権侵害に対する報復として、自らが選ぶ時期、場所、方法で」対応すると述べた。
カシミール地方では実効支配線を挟んで両国軍が激しい砲撃・銃撃戦を展開。警察などによると、インド側で民間人10人が死亡し48人が負傷。パキスタン側では少なくとも6人死亡した。
パキスタン首相府はインドの航空機やドローン(無人機)5機を撃墜したと主張したが、インド政府は確認していない。カシミール地方のインド支配地域の当局筋は、夜間に戦闘機3機が異なる場所で墜落し、操縦士は病院で手当てを受けているとロイターに語った。
<インド、差し迫った攻撃リスクに「先制対応」>
インド軍は、外務省との共同会見で、イスラム過激派組織「ジャイシュ・エ・ムハンマド」と「ラシュカレトイバ」の戦闘員募集センターや武器倉庫、訓練施設を擁する「テロリストキャンプ」を標的としたと明らかにした。攻撃の具体的な方法は明らかにせず、民間人や民間インフラが巻き込まれないよう精密・高度な兵器を使用したと説明した。
ミスリ外務次官は会見で「パキスタンに拠点を置くテロ組織に関する情報の収集と監視の結果、インドへのさらなる攻撃が差し迫っていることが判明し、先制的かつ予防的な攻撃を行う必要があった」と述べた。インドでこれまでに発生したパキスタンの関与が指摘される攻撃を列挙し、4月の観光客襲撃事件以降、パキスタンは自国の「テロリストのインフラ」に対して何もしていないと指摘した。
<国際社会は自制を要請>
トランプ米大統領はこの状況について「残念」とした上で、「早期の終息を願う」と述べた。
国連の報道官はグテレス事務総長が両国に対し、最大限の自制を求めたと述べた。
中国外務省は声明を発表し、インドとパキスタン両国に対し自制し、平和と安定を最優先するよう求めた。インドの軍事行動は遺憾であり、現状を懸念していると述べた。
インドの今回の攻撃は、カシミールを巡る過去の衝突の際の対応をはるかに超える大規模なものだ。
フォーリンポリシー誌の記者で南アジア専門アナリストでもあるマイケル・クーゲルマン氏は「インドの攻撃の規模は2019年に行われたものよりはるかに大規模で、パキスタンも相当な反撃をすると予想される」と述べた。
「インドの次の動きに注目が集まるだろう。攻撃と反撃が行われ、次に何が起こるかは、この危機がどれほど深刻になるかを示す最も強力な兆候となるだろう」と指摘した。