最新記事

中国政治

習近平「歴史決議」──鄧小平を否定矮小化した「からくり」

2021年11月14日(日)20時53分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

習近平中共中央総書記 Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

習近平の父・習仲勲は鄧小平の陰謀により失脚したのだから、「歴史決議」で鄧小平をどのように位置づけるかが焦点の一つだった。一見、平等に扱ったように見えるが、実は思いもかけぬ「からくり」が潜んでいた。

100年の歴史の中での各指導者の位置づけ

11月11日に公表された第19回党大会六中全会公報によれば、習近平は「歴史決議」の採択に向けた講話の中で、中国共産党建党100年の歴史を、まずは大きく以下のように位置付けている。( )は筆者。

──中国共産党建党中央委員会(中共中央)政治局は、中国の特色ある社会主義の大旗を高く掲げ、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、三つの代表の重要な思想(江沢民政権)、科学的発展観(胡錦涛政権)、習近平新時代の中国特色ある社会主義思想を指導とすることを堅持しながら、第19回党大会と第19回党大会一中全会、二中全会、三中全会、四中全会、五中全会の精神を全面的に貫徹し、国内外の大局やコロナ感染防疫や経済社会発展および発展と安全などのバランスをうまく統制しながら統治してきた。そして安定の中でも進歩を遂げ、経済は比較的良好な発展を遂げ、科学技術の自立と自強(自らの力で強くなる)を積極的に推進し、改革開放を絶えず深化させ、貧困との戦いを計画通りに勝ち抜き、民生保障を効果的に改善し、社会の大局的安定を維持し、国防と軍隊の現在化を着実に進めてきた。

さらに、中国の特色ある大国の外交を全面的に進め、党史に関する学習教育を堅実で効果的に行い、多くの深刻な自然災害を克服するなど、さまざまな事業で重要な新しい成果を上げた。 (引用ここまで)

その上で、公報は以下のような解説を続けている。( )内は筆者。

──中国共産党創立100周年を記念する一連のイベントが成功裏に開催された。習近平中国共産党中央委員会総書記は(一連のイベントの中で)重要な講話を行い、小康社会の全面的な構築完成を正式に発表し、全党と各民族の人民が二つ目の100年の目標(=2049年の建国100周年記念)に向かって力強く雄々しく新征程(新たな遠征の道程)に踏み出すよう激励した。(引用ここまで)

これがまず冒頭部分で、ここでは「毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦涛、習近平」が唱えた思想が、平等に評価されているかのように見える。

しかし、この冒頭部分においてさえ、実は見落とせない言葉がちりばめられているのだ。引用文中の太字部分を見てみよう。

1.改革開放は実際上、習仲勲が当時の華国鋒(中共中央主席、中央軍事委員会出席、国務院総理)とともに広東省深圳市で「経済特区」を唱えて始まったものだが、それを鄧小平が思いついたように置き換えてしまったものだ。しかし鄧小平が改革開放を唱えたという概念は固定化されてしまっているので、それを覆すことなく、父・習仲勲が手を付けた改革開放を深化させ、鄧小平が先富論によって招いた貧富の格差(=鄧小平の負の遺産)を無くす方向に動いたことを暗示している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ緊急関税、最高裁が違法判決なら1750億ド

ワールド

日ロ関係はゼロに低下、平和への対話進行していない=

ビジネス

金価格が上昇、米イラン緊張と欧州債券利回り低下で

ビジネス

トランプ氏関係者、ロシア企業とアラスカガス開発で合
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 3
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 6
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 7
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 10
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中