株式インデックス投資、何が良いか──先進国株、新興国株、米国株と日本株、どれを選ぶ?

2021年10月11日(月)19時30分
熊紫云(ニッセイ基礎研究所)

しかし、日本の株式指数を除いて投資期間が長ければ、元本割れをした期間が投資全期間に占める割合が徐々に小さくなる傾向があり、日本バブル崩壊直前からの投資だと日本のものを除くと20%以下、元本割れの期間が最も少ない米国の株式指数は1~2%に抑えられている。つまり、最低点B(図表7:緑点)にいても我慢して持ち続けていれば、一時的に損失(図表7:マイナス)を被ったとしても、その後の好調時期の値上がり(図表7:プラス)によって埋め合わせることができている。過去データからは、一時的に株式インデックスで元本割れして含み損を抱えるリスクや不安な気持ちを受け入れることの対価として、預金等よりも極めて高い利回りが得られるということが分かる。投資対象さえ間違わなければ、長期投資は株式インデックス投資のリスクを抑制できる有効な手段として期待できるものと思われる。

5――株式インデックスの将来のパフォーマンス

過去と今後は違うので、過去を参考にしつつも、今後を見極める必要がある。長期投資はリスクが抑制できる可能性が高いとはいえ、株価上昇を見込むことができる株式インデックスに投資すべきだろう。では将来に上昇が見込まれる株式インデックスを選ぶにはどのようにすれば良いのだろうか。インデックスは個々の構成銘柄(企業)の株価から算出されるが、その構成銘柄全体の株式価値について考える必要がある。株式を将来の利益を受け取る権利だと解釈するならば、株式の現在価値は利益と、利益の期待成長率、株主要求利回りを用いて以下のように表すことができる。

式(1) 株式の現在価値=利益/(株主要求利回り-期待成長率)

式(1)から、利益が増加するか、投資家の成長期待(期待成長率)が高くなるか、株主要求利回りが低くなるかによって、株式の現在価値が高くなる。

尚、各国の潜在成長力は資本ストックの増加、労働力の増加、生産性の向上(技術革新等)、国のGDP成長等、様々な方面からもみることができる。

しかし、ここでは、具体例として、分かりやすさを優先して米国株式を代表するS&P500と日本株式を代表するTOPIXを取り上げる。

現在の企業の収益性を評価する指標であるROEを比較してみよう。最近10年間の実績から、日本企業のROEは上昇してきてはいるが、概ね6~8%、一番高くても10%を超えない程度であるのに対して、米国企業のROEはほぼ10%半ばで推移している【図表9】。日本企業のROEが低い水準にあるのはそもそもROA(利益率)が低いことに起因しており、つまり日本企業の稼ぐ力が相対的に劣後しているからだと指摘されている7。現時点では、米国企業の収益性が日本企業より高い。ただし、TOPIXは2,000社を超える多くの企業を抱えているため、今後、東証での市場区分の見直しで銘柄が厳選されれば、構成銘柄全体の収益性は多少改善する可能性がある。

────────────────
7 2014年、「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト(伊藤レポート)37頁より。ROE=ROA×回転率×レバレッジ、日米それぞれのROAが3.8% と10.5%、回転率が0.96と0.96、レバレッジが2.51と2.69(2012年本決算実績ベース、金融・不動産除く)。

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