死亡率を10%以上も低下させた健康アプリと医療機関のコラボ
Health apps track vital health stats for millions of people, but doctors aren’t using them
<健康系ウエアラブル端末で集めたデータを医療現場で活用できれば真の健康増進につながることが実証研究で確認された>
健康・医療分野のウエアラブル端末とアプリは、日常生活の一部になりつつある。血糖値の測定から、妊娠しやすい時期の特定まで、さまざまな健康管理を助けるとうたわれているスマートフォン(スマホ)のアプリは30万種類を超える。
だが、これまでのところ、こうしたアプリは、医療そのものの質の改善にはほとんど活用されていない。ユーザーが自分の健康状態に関するデータを集めたり、それを家族や友達とシェアすることはできるが、一般に、そのデータを病院の電子カルテと結び付けたり、医療従事者がモニタリングして、それに基づく助言をすることはできないからだ。
筆者の研究チームは、高血圧症の患者を対象に、アプリから得た健康データを医療に活用できる可能性を調査した。その結果、こうしたデータを、ユーザーが受けている医療と統合すれば、患者の健康を大幅に改善できることが分かった。
ただ、少なくともアメリカでは、ウエアラブル端末から得たデータをこのように使うのは容易ではない。高血圧症は、アメリカ人の最も深刻な慢性疾患の1つだ。米疾病対策センター(CDC)によると、2018年、高血圧症は50万人近くの直接的または間接的死因となり、成人の半分(約1億1000万人)の健康に影響を与えた。
放置すれば、高血圧症は心臓その他の器官に取り返しのつかないダメージを与える恐れがある。食生活や飲酒量、運動や喫煙の習慣を変えるだけで、高血圧症は簡単に防いだり、発症を遅らせたりできる。それでも発症してしまった場合は、治療と管理が必要だ。だが、通常、患者が医師の診察を受けるのは年に3〜4回(しかも診察時間は短い)。これでは医師が症状を継続的に追跡し、評価し、根本原因を探ることは難しい。
そこで筆者の研究チームの1人(内分泌科の専門医だ)が、高血圧症患者の状態をモニタリングして治療に役立てるアプリを開発した。
このアプリは、パソコンやスマホで使うもので、ウエアラブル端末対応ではないので、患者は自分で血圧と脈拍を測定して入力する必要がある。医師はその記録を毎日チェックして、必要と判断すれば、新たな薬物治療などの介入措置を提案したり、既存の薬物治療を調整したり、食事や運動についてアドバイスをする。
このアプリは無料で患者に配布され、筆者の研究チーム(とアシスタント)は、無料で患者のデータをモニタリングした。患者と医師は、アプリを通じて直接コミュニケーションを取ることもでき、最善の治療法について共同で決定を下すことができた。
おかげで患者が、数回データを入力しただけでアプリを使わなくなる事態も避けることができた。
こうして4年にわたり1600人の高血圧症患者を追跡したところ、典型的なアプリユーザーは、アプリを使わなかった人と比べて、収縮期血圧(いわゆる「血圧の上」)が2mmHG下がった。血圧の上が150mmHGを超える人の場合、下落幅は6mmHGにもなった。
血圧の上が10mmHG下がると死亡リスクは13%低下するから、これは大きな改善と言える。筆者たちの研究は、健康アプリは慢性病の管理に役立つという、従来の研究結果を裏付けるものだ。