最新記事
韓国

韓国がSLBM発射実験に成功、「朝鮮半島ミサイル危機」の時代が幕を開けた

2021年9月21日(火)18時27分
スティーブン・スタシュウィック(ジャーナリスト、元米海軍士官)
韓国SLBM発射実験

韓国は潜水艦「島山安昌浩」からSLBMを発射する実験に成功した THE DEFENSE MINISTRYーHANDOUTーREUTERS

<潜水艦からの弾道ミサイル発射実験に成功した韓国と、北朝鮮との緊張関係は強まる一方。このまま際限なき開発競争に突入するのか>

朝鮮半島にとって「ミサイル発射実験週間」だった。

なかでも注目すべきなのは、韓国が9月15日に潜水艦からのSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)発射実験に初めて成功したことだろう。韓国は9月に入って、SLBMの水中発射実験を繰り返していた。

今回の成功で、韓国は潜水艦からSLBMを発射する能力を持つ世界で7番目(事実上、発射に成功したとされる北朝鮮を含めると8番目)の国になった。そのうち、非核保有国は韓国だけだ。

より長射程で弾頭重量が大きい弾道ミサイルは、核兵器の運搬手段として潜水艦発射巡航ミサイル(SLCM)より優れている。韓国によれば、通常弾頭を搭載する同国のSLBMは、北朝鮮国内の防備が強固な攻撃対象への使用を想定したものだ。

大半のSLBMは射程が延長され、大陸間に相当する長距離も飛行できる。だが「玄武4-4」と命名された韓国のSLBMは射程がはるかに短い可能性が高く、その有効性は比較的コンパクトな朝鮮半島内に限られる。

北朝鮮は2016年、初めてSLBM発射実験に成功したとされる。今年1月の軍事パレードでは、直径を拡大した新型SLBMも公開した。

今回の韓国の実験では、8月に就役したばかりの同国海軍初の3000トン級潜水艦「島山安昌浩」から発射が行われた。実験を視察した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、SLBMは北朝鮮の脅威に対する「確実な抑止力」になると述べている。

南北関係を「完全に破壊」と北は警告

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は韓国のミサイル発射実験と文の発言を受けて、南北関係を「完全に破壊」するリスクを冒していると警告した。

韓国のSLBM発射実験に先立ち、北朝鮮は9月15日、日本海に向けて短距離弾道ミサイル2発を発射している。

その数日前には連日、小型核兵器が搭載可能とみられる新型巡航ミサイルの発射実験を実施。1500キロ先の目標に命中したという。射程や外観から判断すると、約40年前に開発されたアメリカの巡航ミサイル「トマホーク」に、少なくとも表面上は類似した兵器だ。

韓国国防省は、新型の弾道ミサイルについて「コンクリート製建造物や地下トンネルを攻撃でき、主要ターゲットを正確かつ猛烈に攻撃して無力化することが可能だ。強力な高性能弾道ミサイルを中核として、わが国の平和時における抑止力を向上させ、緊急時の圧倒的な対応力をアピールする」と表明した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英追加利下げ巡る不確実性増大を市場は理解=中銀総裁

ワールド

UAE、イスラエルのヨルダン川西岸入植計画は「レッ

ワールド

日・EUなどとの貿易協定「解消」も、関税裁判敗訴な

ワールド

ハーバード大への助成金停止は違法、米地裁が政権に再
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 6
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中