最新記事

米中関係

バイデンが「中国封じ込め」に本気のわけ

Joe Biden's Stance Against China Is Radically Different From Donald Trump's

2021年9月28日(火)22時03分
ジョン・フェン
バイデン

多国的枠組みで中国封じ込めを狙うバイデン Evelyn Hockstein-REUTERS

<トランプ時代の敵対政策に比べて協力に転じたと見える部分もあるが、バイデンも実は強硬だ。中国の味方は少なく、アメリカは前進している>

ジョー・バイデンがアメリカの大統領に就任して8カ月。政権交代によりドナルド・トランプ前大統領の下での敵対的な関係の見直しが進むのではという中国側の当初の期待にも関わらず、米中の緊張は続いている。

両国政府はトランプ時代より対話はするようになっているが、議論はちぐはぐだ。どちらも自国の基本原則を主張するばかりで、相手の言うことにはまるで耳を傾けない。

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、トランプ政権が中国(特に共産党)を狙い撃ちにして行ったさまざまな報復措置が撤廃されるのを待っている。一方でバイデンが静かに振りかざそうとしているのは、民主主義VS.専制主義の存在を賭けた戦い(とバイデンが言っているもの)のためのアメリカの力だ。

貿易戦争や新型コロナウイルス問題をめぐるトランプ流の攻撃的なレトリックこそ姿を消したかも知れないが、バイデンの穏やかなトーンの陰には深い計算がある。両方を並べてみれば、「中国封じ込め理論」がこれまでになく現実味を持って見えてくるはずだ。これまでの軍事的な対抗関係に加え、経済やテクノロジー、外交の分野に加えてグローバルヘルスの分野のリーダーの座を巡っても、中国はアメリカとの厳しい競争に直面している。

「自由世界VS.中国」の構図

アメリカ政府は中国に対抗してワクチン外交を展開し、途上国に対する中国の影響力を弱めようとしている。また、国際的な協力関係の構築を通して中国にたびたび挑戦を仕掛け、中国はそのたびに「冷戦メンタリティー」だといらだちを示した。

中国の当局者、そして特に政府系の報道機関は、アメリカが失敗するとそれをことさらに取り上げる傾向がある。だが、アメリカの信用をおとしめようとする彼らの主張が世界の多くの人々の耳に届いているという証拠はほとんどない。さらに重要なのは、アメリカはゆっくりとではあるが前進を続けていること、そして既存の国際秩序を守ろうとするアメリカ主導の努力の勢いが衰える気配を見せていないことだ。

「トランプは中国との競争を、主にアメリカ対中華人民共和国という枠組みだけで見ていた。一方でバイデンは物事を、自由世界全体(リーダーはアメリカ)対中国というプリズムを通して見ている」と語るのは、コンサルタント会社パーク・ストラテジーズのショーン・キング上級副社長だ。

米中のライバル関係はもはや所与の条件だとキングは言う。「それにバイデンはできるだけ多くの国々や人を自分の側に付けたいと思っているようだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイランに攻撃か、規模限定的 イランは報

ビジネス

米中堅銀、年内の業績振るわず 利払い増が圧迫=アナ

ビジネス

FRB、現行政策「適切」 物価巡る進展は停滞=シカ

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中