最新記事

米中関係

バイデンが「中国封じ込め」に本気のわけ

Joe Biden's Stance Against China Is Radically Different From Donald Trump's

2021年9月28日(火)22時03分
ジョン・フェン

台湾の国防安全研究院の蘇紫雲(スー・ツーユィン)は、バイデン政権の対中アプローチは両国関係の「構造的変化」の結果だと言う。一方でアメリカには、自由や民主主義といった価値が直接的な挑戦を受けていると認識がある。

米中両国の間には最近、核バランスという問題も出てきたと蘇は本誌に述べた。

「中国は東風41(大陸間弾道ミサイル)や新疆ウイグル自治区の発射施設を使い、北極上空の近道を通過するようにすればアメリカ本土を迅速に攻撃できる」と蘇は言う。中国海軍の弾道ミサイルを搭載した原子力潜水艦も、台湾とフィリピンの間のバシー海峡を通って西太平洋のフィリピン海に出ればアメリカ本土の脅威になりうるという。

アメリカとイギリス、オーストラリアによる安全保障の新たな枠組み「AUKUS(オーカス)」が発表されたり、インド、オーストラリア、日本、アメリカの4カ国の枠組み「クアッド」の会合が首脳レベルに格上げされたことも、中国の軍事的拡張のみならず、新技術や国際機関の政策決定への中国の影響力に対抗していくアメリカの姿勢の表れだ。

1月の大統領就任以降、バイデンや政権幹部は、競争が激化する中でも中国との協力は可能であり、好ましいと主張してきた。気候変動対策やグローバルヘルスはしばしば、両国が協力可能な分野の例として挙げられた。

「協力」の抱える矛盾と困難

だが識者は、そうしたバイデン政権の姿勢に懐疑的だ。人権問題や、意見の異なる国々に対する軍事・経済的な圧力といった根本的な問題において、アメリカは中国に立ち向かい続けると公約しているからだ。そもそも、アメリカの矛盾を見つけた時の立場を中国ははっきりさせている。

例えば22日、中国の秦剛(チン・カン)駐米大使はこう警告している。「アメリカは中国の利益を──特に中国の主権や領土的統一に関する重大事項において──無視したり損なう一方で、自国だけの要求や利害のある分野で中国の協力を期待すべきでない」


ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム次期指導部候補を選定、ラム書記長留任へ 1

ビジネス

米ホリデーシーズンの売上高は約4%増=ビザとマスタ

ビジネス

スペイン、ドイツの輸出先トップ10に復帰へ 経済成

ビジネス

ノボノルディスク株が7.5%急騰、米当局が肥満症治
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中