焦点:米国の早期利下げ、FRBがシグナル発せず市場の観測は後退

7月30日、米連邦準備理事会(FRB)は利下げを求める容赦ない政治的圧力にもかかわらず、29─30日開いた連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25─4.50%に据え置いた上、政策金利を早期に引き下げることを示唆するシグナルを発しなかった。ニューヨーク証券取引所で同日撮影(2025年 ロイター/Jeenah Moon)
Saqib Iqbal Ahmed Davide Barbuscia
[ニューヨーク 30日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は利下げを求める容赦ない政治的圧力にもかかわらず、29─30日開いた連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25─4.50%に据え置いた上、政策金利を早期に引き下げることを示唆するシグナルを発しなかった。こうしたFRBの判断は、当局の強い警戒姿勢を浮き彫りにするとともに、来月のFOMCで政策金利が引き下げられるとの観測を後退させるよう投資家に強いる格好となった。
FOMCではトランプ大統領が指名した2人の理事が政策金利の据え置きに反対票を投じた。この理事2人は、現在の金融政策は過度に制約的という点でトランプ氏と意見が一致している。
FOMCの結果を受けて米国債利回りとドルは上昇、米国株は下落に転じた。
カーソン・グループのグローバル・マクロ・ストラテジスト、カーソン・バルギース氏は「FRBは利下げの確率(を示す時期)を先送りしたのだと思う」と述べた。
同氏は「彼らにはさらなるデータが必要だが、追加のデータを入手するにはもっと時間が必要であり、時間が必要になることは政策金利がさらに数カ月にわたって制約的な水準に据え置かれることを意味する」と話した。
CMEグループによると、FF金利先物市場が織り込む9月の利下げ確率は前日の約65%から46%に低下した。同市場は、ここ数日想定していた年末までの2回の25ベーシスポイント(bp)の利下げをもはや完全には織り込んでいない。
FRBのパウエル議長はFOMC後の記者会見で「9月(のFOMC)については何も決定していない」と強調。9月のFOMCまでには依然、幅広いデータを検証する時間があると付け加えた。
野村の先進国市場担当チーフエコノミスト、デービッド・シーフ氏は「(パウエル氏が)それとなく9月の利下げが基本路線だと示唆する可能性は若干あった」としながらも、それはデータが9月の利下げと整合性が取れる形で連続しなければ実現しないと説明した。
パウエル氏が、政策金利は「若干制約的」な水準にとどまっているにもかかわらず、米経済は底堅さを示していると強調したことを受け、30日の金融市場では債券利回りが上昇した。10年物米国債と2年物米国債の利回りはいずれも、パウエル氏の発言後に約2bp上がった。
TCWのグローバル金利共同責任者、ジェイミー・パットン氏は、投資家の姿勢が債券市場の反応を増幅した可能性があると指摘。「市場は、9月の利下げを正当化するデータが十分に得られているという考えで、少し先走っていたのだと思う」と語った。
FRBがいつ利下げを開始するかのヒントをパウエル氏が示さなかったことで、投資家は今後2カ月間にわたり金融緩和のタイミングを探って物価と雇用のデータを解析しなければならない。
一方、今年に入り強い売り圧力を受けてきたドルは、FRBの比較的タカ派姿勢のメッセージにある程度支えられ、主要通貨に対して2カ月ぶりの高値に上昇した。
BofAグローバル・リサーチのストラテジストグループは投資家向け資料に「当社は依然としてドルが中期的には軟調と考えているが、短期的なリスクとしては上下双方に振れる情勢にある」と記した。
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのブロードマーケッツ債券部門の共同責任者、ビシャル・カンドゥジャ氏は「FRBの辛抱強い姿勢と米経済の一貫した力強さは、ドルの下落局面を一時休止させる要因となっている」と指摘。だが、FOMCに対する市場の反応を深読みすべきではないと警告した。
カンドゥジャ氏は「全体として、彼ら(FRBの当局者)は姿勢を全く変えていないと思う」と語った。同氏は、来年末までに3─5回の利下げを織り込んでいるが、次の2回の物価統計が重要だと考えている。
「彼らは依然として様子見姿勢を取り、次の2回の物価統計でインフレが若干上振れすると確信している」と述べたが、「彼らは、こうした(物価の)動きは一時的な変動だということも確信している」と付け加えた。