最新記事

コロナ起源

武漢研究所、遺伝子操作でヒトへの感染力を強める実験を計画していた

Wuhan Lab Wanted to Enhance Bat Viruses to Study Human Risk, Documents Show

2021年9月24日(金)16時20分
メーガン・ロス

公開された複数の文書からはは、研究者たちがコロナウイルスの遺伝子を操作して変種をつくり、それを複数の洞窟に放ってコウモリが感染する様子を観察して、それらのウイルスが人間にもたらすリスクを評価しようと計画していたことが明らかになった。

DRASTICは9月21日にウェブサイトに行った投稿の中で、公開した複数の文書は、匿名の内部告発者から提供されたものだと説明。文書には、エコヘルス・アライアンスが武漢ウイルス研究所と「協力」して、「ヒトに感染するコウモリコロナウイルスの危険な先端研究を行おうと」計画し、DARPAに研究資金の助成を要請したことが記されていたという。

DARPAは米国防総省傘下の研究機関であり、そのPREEMPT(病原性脅威発生の予防)プログラムを通じて「感染症の脅威から軍を守る」ことが使命の一つだ。


DRASTICは、エコヘルス・アライアンスがDARPAに研究費支援を要請する文書の中で、「武漢ウイルス研究所が集めた、致死性の高いコウモリコロナウイルスのキメラウイルスを、実験用マウスに注射する研究を提案」していたと指摘した。

3年半かかる研究の費用支援をDARPAに要請

またDRASTICが公開した、エコヘルス・アライアンスの計画には、プロジェクトの目的は「コウモリ由来でヒトにも動物にもリスクを及ぼす、SARS(重症急性呼吸器症候群)に関連のある新型のコロナウイルスが、アジアに広まる潜在的可能性を排除する」ことだと記されていた。研究計画概要には、研究者たちはコロナウイルスが「広まるリスクが高いと認められた」複数の場所で「集中的にコウモリの検体を採取」すると書かれていた。

エコヘルス・アライアンスはまた、デューク・シンガポール国立大学医学部、米ノースカロライナ大学、パロアルト研究所(カリフォルニア)、米地質調査所・国立野生動物保護センターおよび中国・武漢ウイルス研究所の研究者たちと協力して、研究を進める計画だと文書に明記。研究には3年半かかると推定しており、DARPAに研究費1400万ドルの助成を要請していた。

この研究計画の提案は2018年3月に行われている。新型コロナウイルスが世界中に広まる2年足らず前のことだ。新型コロナウイルスは、武漢で最初にヒトへの感染が報告され、感染流行が起きている。

DRASTICの調査のお陰で、今では武漢ウイルス研究所が長年、コウモリが生息する複数の洞窟で調査を行い、さまざまな種類のコロナウイルスを収集していたことが明らかになっている。しかもそれらのウイルスの多く(新型コロナウイルスに最もよく似たものも含む)は、2012年に3人の鉱山作業員がSARSに似た感染症とみられる症状で死亡した洞窟から採取したものだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州首脳、防衛費増額巡り協議 ウクライナ平和維持軍

ワールド

台湾、米から数十億ドルの武器購入検討 自衛の決意示

ワールド

デルタ航空機が加トロント空港で事故、着陸時に横転か

ワールド

原油価格上昇、カスピ海ポンプへのドローン攻撃で供給
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞が浄化される「オートファジー」とは何か?
  • 2
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防衛隊」を創設...地球にぶつかる確率は?
  • 3
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VATも標的に
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    ロシアの戦車不足いよいよ深刻...「独ソ戦」時代のT-…
  • 10
    ドイツ国防「問題だらけ、解決策皆無」「ドローンは…
  • 1
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン...ロシア攻撃機「Su-25」の最期を捉えた映像をウクライナ軍が公開
  • 4
    2025年2月12日は獅子座の満月「スノームーン」...観…
  • 5
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景…
  • 6
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 7
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 8
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 9
    iPhoneで初めてポルノアプリが利用可能に...アップル…
  • 10
    【クイズ】今日は満月...2月の満月が「スノームーン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中