最新記事

コロナ起源

武漢研究所、遺伝子操作でヒトへの感染力を強める実験を計画していた

Wuhan Lab Wanted to Enhance Bat Viruses to Study Human Risk, Documents Show

2021年9月24日(金)16時20分
メーガン・ロス
武漢研究所P4実験室

武漢ウイルス研究所で最も危険なウイルスを扱うP4実験室 Thomas Peter-REUTERS

<アメリカの非営利研究機関に協力するかたちでコロナウイルスの感染力を高め、「ヒトへのリスク」を特定することを目指していた>

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生する2年足らず前に、中国・武漢ウイルス研究所の科学者たちが、コロナウイルスの遺伝子を操作して人間への感染力を高め、それをコウモリの生息する洞窟に放つ計画を立てていたことが分かった。

新型コロナウイルスの起源調査に取り組んでいる科学者や活動家のグループが公開した、数多くの文書の中から、このような計画が提案されていたことが分かった。米ジョンズ・ホプキンズ大学によれば、世界ではこれまでに、新型コロナに感染した470万人が死亡している。

問題の研究計画は、米非営利研究機関「エコヘルス・アライアンス」(ピーター・ダザック代表)が米国防総省傘下の防衛先端技術研究計画局(DARPA)に提案して、研究の助成を申請したものだ。武漢の研究者たちは、計画の「パートナー」として提案文書に記載されていた。同文書には、計画の「準備は順調に進んでいる」と記されていたものの、DARPAは研究の助成を拒否。その後、計画がどうなったのかは分かっていない。

だがこの計画の存在が明らかになったことで、パンデミックについて武漢ウイルス研究所が果たした役割をめぐる議論が、さらに活発化するのは確実だろう。中国政府は、ウイルスの発生源は生鮮市場だという主張を変えておらず、武漢ウイルス研究所からの流出を示唆する声に強い不快感を示している。

アマチュア調査チーム「DRASTIC」が文書を公開

それでもますます多くの科学者や、ジョー・バイデン米政権をはじめとする世界各国の政府は、ウイルスが同研究所から流出した可能性を排除することを拒んでおり、中国に対して、国際的な科学調査に全面的に協力するよう求めている。

こうしたなか、中国政府の公式見解に懐疑的な見方を主導してきたDRASTIC(新型コロナ感染症に関する分散型の先鋭匿名調査チーム)が、今週に入って複数の文書を公開した。ニューズウィークでは、この文書の検証を行えていない。

パンデミックの発生以降、20人以上にのぼるDRASTICの調査員(多くは匿名)たちは、複数の国で独自に調査を行ってきた。彼らはこれまで注目されていなかった文書を発掘し、さまざまな情報をつなぎ合わせ、その全てを公開してきた。そうする中で、彼らの調査活動は徐々に、プロの研究者やジャーナリストたちに高く評価されるようになってきている。

米ラトガーズ大学の教授(化学および化学生物学)でワクスマン微生物研究所の実験施設主任でもあるリチャード・エブライトは、DRASTICが新たに公開した複数の文書から分かった計画の存在についてツイートし、国際社会はこのニュースに怒りの声をあげるべきだと主張した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、パウエル氏を再び非難 「自分がFRBを

ワールド

トランプ氏、イラン攻撃計画の有無明言せず 「協議に

ビジネス

米新規失業保険申請24.5万件、予想と一致 一段の

ワールド

ウクライナ、共同基金下での軍事支援巡り米と協議=副
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 2
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火...世界遺産の火山がもたらした被害は?
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    【クイズ】「熱中症」は英語で何という?
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 7
    電光石火でイラン上空の制空権を奪取! 装備と戦略…
  • 8
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 9
    「音大卒では食べていけない」?......ただし、趣味…
  • 10
    下品すぎる...法廷に現れた「胸元に視線集中」の過激…
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 6
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 7
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 8
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中