最新記事

心理学

コロナ禍のトラウマから、子供の心を守るレジリエンスの育て方

KIDS ARE ALRIGHT

2021年9月24日(金)19時23分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)
マスク姿の子供たち

PROSTOCK-STUDIO/ISTOCK

<新型コロナのパンデミックによるトラウマをしなやかに乗り越えるため、大人も子供のレジリエンスを信じて育てよう>

アメリカではこの秋から多くの学校が本格的に再開されるが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の「普通」にすんなり戻れそうにはない。子供たちはじっと座っていられず、授業中におしゃべりをして、廊下を走り回り、口答えをして、ルールを守らせることもいつもより難しく感じるだろう。

「大勢の子供が、生理学的にストレスに過剰反応する状態で教室に戻ってくる」と、元小児科医でカリフォルニア州公衆衛生局長官のナディーン・バーク・ハリスは言う。

1年半のコロナ狂騒曲は子供に累積的な影響を与えていると、バーク・ハリスは指摘する。そのうえ突然、生活のパターンが変わるのだ。自宅に閉じ込められてパソコンで勉強していた子供たちが、教室で社会的なプレッシャーにさらされれば、ストレスホルモンであるコルチゾールが大量に分泌されるだろう。

そこに新学期という当たり前の興奮が加わって、普段はおとなしくて行儀の良い子供でも、不安や悲しみ、恐怖、怒りを感じやすくなる。こうした感情は、注意力の低下、引っ込み思案、破壊的な行動、欠席といった形で表れるだろう。

しかしこの時期は、掛け算や読解力以上のことを教える機会にもなる。それは困難な経験から立ち直る方法という、人生のあらゆる局面で重要なスキルだ。

レジリエンス向上のための手助けを

今後数カ月で子供が新型コロナの試練から立ち上がり、レジリエンス(回復力)を高めることができるかどうかは、親はもちろん、教師などサポートする人々の行動がカギを握る。子供だけでなく私たち全員が、レジリエンスを試されている。

教育現場における適切な対応は、テンションが高過ぎる子供を職員室に行かせたり、教室の端に座らせたりすることではないと、バーク・ハリスは言う。子供が自分の小さな体がどうして興奮しているのかを理解して、落ち着きを取り戻して新しい日常に適応できるように、教育者が手助けしなければならない。

昨年12月にカリフォルニア州公衆衛生局が発表した438ページの報告書「レジリエンスへのロードマップ」は、新型コロナに限らず子供にトラウマや苦痛の兆候が見られるときに、大人がどのように対応すればいいかという指針を示している。

2回目のパンデミックの夏を終え、ワクチン接種率は少しずつ上昇し、人々は普通に戻ろうと恐る恐る最初の一歩を踏み出している。だが、社会全体の精神的な健康状態がパンデミック前に完全に戻るのはいつになるのか、このトラウマや不安から解放される日が来るのかという疑問は残されたままだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、前倒しの過度の利下げに「不安」 

ワールド

IAEA、イランに濃縮ウラン巡る報告求める決議採択

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中