最新記事

アフガニスタン戦争

アフガン撤退は愚かな判断と英ブレア元首相が批判

Tony Blair Says 'Imbecilic' Afghanistan Withdrawal Has 'Every Jihadist Group Cheering'

2021年8月23日(月)16時51分
ナタリー・コラロッシ
ブレア英元首相

米軍のアフガン撤退を批判したイギリスのブレア元首相 Henry Nicholls-REUTERS

<アメリカと共にアフガン戦争に参戦した当時の首相トニー・ブレアはアフガニスタンを見捨て、タリバンの復活を許したバイデンの判断を酷評した>

2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロの後、アメリカと共にアフガニスタン攻撃を決断し、自らも軍隊を送ったイギリスのトニー・ブレア元首相は、アフガニスタンから撤退したジョー・バイデン米大統領の決定を「愚か」と評し、「世界中のすべてのイスラム過激派組織が歓声を上げている」と警告した。

ブレアは8月21日、自身が主宰する研究機関のウェブサイトにエッセイを寄稿し、そのなかでアフガニスタンから軍隊を撤退させ、タリバンに政権を奪取されやすい状態に置くという決定は政治によって引き起こされたもので、過去20年間に積み上げてきた成果を台無しにする恐れがあると述べた。ブレアは1997年から2007年までイギリスの首相を務めた。

「アフガニスタンとその国民を見捨てることは、悲劇的で、危険で、不必要であり、アフガニスタンの利益にも、私たちの利益にもならない」と、ブレアは書いた。「世界は今、西側の立場がわからなくなっている。アフガニスタンから米軍を撤退させる決定は、大きな戦略ではなく、政治に基づくものであることは誰が見ても明らかだ」

ブレアはさらに、20年続いた「『永遠の戦争』を終わらせる」という愚かな政治的スローガンを実現するために撤退を決めたバイデンを批判し、「あたかも20年前や10年前と同じ規模の戦争が今も続いているかのような言い方までしてきた」と付け加えた。

最後の1人まで退避を

元労働党党首のブレアは続けて、アフガニスタンをいま放置すればイスラム過激派組織を勢いづかせ、中国、ロシア、イランに有利になるだろうと述べた。そして西側はタリバンに「最大限の圧力」をかけ、「信頼できる現実的な」インセンティブ、制裁、行動のリストを起草するよう強く求めた。

ブレアはまた、イギリスとアメリカには、退避の必要があるすべての人が安全に国外に脱出するまで、アフガニスタンに留まる「道徳的義務」があるとも書いた。

「私たちが責任を負っている人々――私たちを助け、私たちの側に立ち、私たちが彼らの側に立つことを要求する権利を持つアフガニスタンの人々を避難させ、安全な場所を与えなければならない」とブレアは述べた。

「勝手に期限を設けることを繰り返してはならない。私たちには、退避が必要なすべての人が国外に出るまで、現地に留まって尽力する道徳的義務がある。それも義務だから渋々とやるのではなく、深い人間性と責任感から進んで努力するべきだ」

8月15日にタリバンがアフガニスタンの支配権を掌握した後、イギリスとアメリカはアフガニスタンに在留する両国市民およびアフガン人協力者の国外退避を急いでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ和平の米提案をプーチン氏に説明、近く立場

ワールド

パキスタン国際航空、地元企業連合が落札 来年4月か

ビジネス

中国、外資優遇の対象拡大 先進製造業やハイテクなど

ワールド

リビア軍参謀総長ら搭乗機、墜落前に緊急着陸要請 8
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中