最新記事

中東

アフガニスタン首都空港、死者が出る混乱 バイデンは撤退の正当性主張

2021年8月17日(火)10時25分
アフガニスタンの首都カブールの空港

アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが15日に首都カブールの大統領府を掌握したことを受け、16日には国外脱出を図る人々が空港に殺到、米国は混乱解消に向けカブールから退避する航空機の運航を停止した。カブールの空港で16日撮影(2021年 ロイター)

アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが15日に首都カブールの大統領府を掌握したことを受け、16日には国外脱出を図る人々が空港に殺到、米国は混乱解消に向けカブールから退避する航空機の運航を停止した。米軍撤退を巡り、バイデン米大統領への批判が強まっている。

アフガンの民間放送局トロニュースの映像では、国外に逃れようとカブールの空港に押し寄せた人々が、滑走路をゆっくりと移動する米軍輸送機にしがみつく様子などが確認できる。

米当局者によると、米国の外交官や大使館職員を退避させる軍用機に人々が無理に乗り込もうとするのを阻止するため、米軍が空に向けて発砲したという。

混乱の中、5人が死亡したという情報があり、カブールから退避する航空機の運航が停止された。目撃者は死亡した原因が発砲によるものか、将棋倒しによるものかは不明としている。米政府当局者はロイターに対し、カブールの空港を警備する米軍部隊が過去24時間に、武装した襲撃者2人を殺害したと明らかにした。

米国防総省の報道官は、米兵士1人が負傷したとの情報があると述べた。

バイデン米大統領は16日、混乱を受けて批判が強まる中、自身の決定の正当性を訴え、米軍にアフガンの内戦で延々と戦いを続けさせるか、トランプ前大統領が交渉した撤退の合意を実行するか選択しなければならなかったと主張。

国外に脱出したアフガン政府指導部のほか、タリバンと積極的に戦わなかった同国軍を非難した。

グテレス国連事務総長は、安全保障理事会に対し「アフガニスタンにおける世界的なテロの脅威を抑制するために全ての手段を用いる」よう呼び掛けた。同国で基本的人権が尊重されるよう確実にする必要があるとも強調した。

国連安保理は、アフガンにおける新政権樹立に向けた協議を求めるとともに、戦争や虐待の終結を呼び掛けた。

ウズベキスタン検察当局は、今週末に数百人のアフガン兵士が軍用機22機とヘリコプター24機で避難してきたと発表した。

ロシア外務省は、ラブロフ外相がブリンケン米国務長官とアフガン情勢を巡り電話会談し、中国やパキスタン、国連との協議を継続する方針で合意したと明らかにした。

タリバンは、女性の権利を尊重し、外国人とアフガン人の両方を保護すると約束するなど、より穏健なイメージを与えようとしているが、多くのアフガン人は、タリバンが過去の厳しい慣習に戻るのではないかと恐れている。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・タリバン大攻勢を生んだ3つの理由──9.11以来の大転換を迎えるアフガニスタン
・タリバンが米中の力関係を逆転させる
・<カブール陥落>米大使館の屋上からヘリで脱出する「サイゴン陥落」再び


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 

ワールド

再送-米ロ首脳、イスラエル・イラン情勢で電話会談 

ワールド

イスラエル、イランガス田にも攻撃 応酬続く 米・イ

ワールド

アングル:「暑さは人を殺す」、エネルギー補助削減で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 10
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 8
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中