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自民党総裁選先行論強まる、五輪後の支持率低下 菅首相再任に不透明感

2021年8月12日(木)17時50分

公選法は「任期満了による総選挙は任期が終わる日の前30日以内に行う」と定める。今回は10月21日が任期満了日のため、任期満了選挙の投開票日は原則9月26日、10月3日、同10日、同17日の4パターンとなる。

衆院選がもっとも遅くなるのは、公職選挙法の例外規定により、10月21日の任期満了ギリギリで解散する場合で、11月28日の投開票となる。

実際に任期満了で行われた戦後の衆院選は1976年の三木武夫内閣のみだ。

高市氏が出馬表明、下村氏も早期総裁選主張

若手中堅の一部からは、衆院選に先立って総裁選を先行実施すべきとの声が出始めた。内閣支持率の低迷を反映し、衆院選で自民党が単独過半数(233議席)を下回りかねないとの予測が週刊誌などで相次いで発表され、「菅首相では戦えない」(自民中堅)との声が複数聞かれるようになった。閣僚周辺でも「菅首相はもともと安倍晋三前首相退陣に伴う緊急登板。そもそも再選を目指すべきではない」との声が出ている。

こうした中、高市早苗元総務相が10日発売の月刊文芸春秋で総裁選への出馬意向を表明した。11日には自民党新潟県連会長の高鳥修一衆院議員が柴山昌彦幹事長代理と面会し、総裁選を衆院選に先行して実施するよう申し入れた。下村博文政調会長も11日のテレビ番組で、総裁選を衆院選前に行うべきとの見解を示した。

昨年9月の総裁選に出馬した岸田文雄元外相も「チャンスがあれば総裁選に挑戦したい」(8日)と発言している。野田聖子・幹事長代行も「(総裁選は)常に準備している」(7月7日)などと出馬意欲をみせている。

22日投開票の横浜市長選で菅首相が推す小此木八郎前国家公安委員長が落選もしくは当選しても苦戦した場合、「菅首相で衆院選を戦えないとの声が本格化する」(関係者)との指摘もある。

一方、当選回数の多いベテランの与党議員の間では表向き冷ややかな反応も多い。「菅おろしを仕掛けているのは選挙の弱い議員」(自民党幹部)、「選挙が厳しいのは野党共闘進捗に原因があり、菅首相に責任をかぶせるのは筋違い」(政府関係者)との声がある。

今後の焦点は、引き続きコロナ感染動向と支持率だ。自民党の選挙管理委員会は26日にも総裁選の日程を決める予定で、総裁公選規定により9月20から29日のいずれかの日に投開票が行われる見通し。もっとも、総裁選の告示後に首相が衆院を解散すれば、総裁選は先延ばしされる。総裁選の日程が決まり、告示されるまでの8月末から9月前半にかけて、党内の駆け引きが激化しそうだ。

(竹本能文 編集:石田仁志)

[ロイター]


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