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【モデルナCEO独占取材】mRNAワクチンはコロナだけでなく医療の在り方を変える

CHANGING MEDICINE FOREVER

2021年8月5日(木)18時18分
デブ・プラガド(ニューズウィーク社CEO)

アルナイラム(・ファーマシューティカルズ)がいい例だと思う。同社が取り組んでいるのはRNA干渉(RNAi)技術といって当社とは逆の技術、タンパク質を生成するのではなくタンパク質の生成を抑える方法だ。アルナイラムは希少疾患の治療薬開発に特化し、4製品が承認済みだ。創業して20年。大体、私が先ほど説明したようなこと(臨床試験や資金調達など)をやった。

だから可能だとは分かっていたが、計画はなかった。パンデミックは想定外だったからだ。

――つまり新型コロナがモデルナを変えたわけだ。今後4~5年で実現したいと思っていたことを一気に加速させた。

想像がつくと思うが非常に濃密な1年半だった。非凡なチームワークをたたえたい。私たちはこの1年半、プライベートを犠牲にして週7日、(ワクチンを現場に届けるために)頑張ってきた。みんな責任感が非常に強かった。もっと頑張れと私がハッパをかける必要は一度もなかった。

人類は実に驚異的だ。他者を守る、助けるといった意識が種として非常に強い。

このチームを率いてきたのは大変な栄誉だ。問題を特定し、優先順位を決め、難しい決断をしなければならなかった。AとBとCをやりたいのに、AかBかCのどれか1つしかできないからだ。チームと共にそれぞれのメリット・デメリットを理解しているかを判断し、決断を下すのも経営の一環だ。危機に際して、優柔不断は命取りになりかねない。

――モデルナは今回のパンデミックに終止符を打つのに重要な役割を果たしている。それについて、あなたや経営陣はどう感じているか。

私たちはまだ仕事をやり遂げることに集中している。まだ終わってはいないのだ。先週末ボストンの街を歩いて妻と食事をした。マスクなしで外出し、共に過ごし、ハグを交わし、食事をし、以前の生活を取り戻している人たちを見て、感動した。実に素晴らしい気分だった。

だが、仕事はまだ終わっていない。中南米では依然ひどい感染拡大が続いている。東南アジアも同様だ。周知のとおりインドもこのところ悲惨な状況に陥っている。イギリスはデルタ株の感染拡大に気をもんでいる。私たちの仕事が終わるのは世界中でワクチン接種が完了したときで、それは22年後半になるだろう。今年中というのは絶対に不可能だ。とにかく製造施設が足りない。

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