最新記事

南シナ海

中国船が垂れ流す人糞が南シナ海の底に堆積──米衛星画像アナリストが警告

Images May Show 'Catastrophic' Levels of Human Waste From Chinese Vessels in South China Sea

2021年7月13日(火)18時12分
ナタリー・コラロッシ
南沙諸島に集まった中国船

南沙諸島のミスチーフ礁。黒い点々は中国船(2015年)  U.S. Navy/Reuters

<数百隻の中国船から出た汚染物質はかなりの量に達しており、珊瑚礁や魚類に取り返しのつかないダメージを与える可能性がある>

過去5年間にわたって収集された衛星画像から、中国船から放出された人間の汚物が、周辺国との領有権争いの渦中にある南シナ海の海域に堆積していることが判明した。アメリカ在住のアナリストが7月12日に明らかにしたところによれば、これらの汚物がサンゴ礁や魚に大きな被害をもたらしているという。

衛星画像の分析に特化した人工知能(AI)を開発するソフトウエア企業シミュラリティを率いるアナリストのリズ・デアは、中国の漁船数百隻が南沙諸島の海域にいかりを下ろして停泊し、人間の汚物や下水、廃水を海中に垂れ流していると指摘した。

この海域における中国の行動をテーマにフィリピンのシンクタンクが開催したオンラインフォーラムの席上、デアは、堆積した汚染物質はかなりの量に達しており、海藻が大発生してサンゴ礁に被害を与えると共に、魚類にも深刻な影響を与えていると警告した。

「停泊した船の下で、汚物が堆積している」と、12日にデアは述べたと、AP通信は報じている。「数百隻の船が南沙諸島の海域にいかりを下ろし、停泊海域にあるサンゴ礁の上に未処理の下水を廃棄している」

漁獲高激減の可能性も

デアによれば、ユニオン堆の名で知られる環礁では、6月17日時点で少なくとも236隻の中国船が確認された。この海域のサンゴ礁で産卵する回遊性のマグロなどの魚類に脅威が及ぶおそれがあるほか、この地域の主要な食料の供給源となっている沖合の海域でも、水産資源が激減しかねないと危機感を示した。

「これは、とてつもない規模の環境破壊であり、もはや後戻りできない段階に近づきつつある」と、デアは前述のフォーラムで述べたとAP通信は伝えている。

デアの警告に対しフィリピン外務省は、独自に評価・検証を行ったのちに、対応策を決めると述べた。2021年に入って中国とフィリピンは、ユニオン堆の北東の端にあるウィットサン礁に、200隻あまりの中国の漁船が居座ったことがきっかけだった。

12日時点で、中国当局者はデアの汚染告発にコメントしていない。ただし、過去には南シナ海の環境や地元の漁業を守る自国の取り組みを強調してきたと、AP通信は指摘している。

南シナ海の広大な領域について領有権を指摘する中国の動きは、日本やインド、ベトナム、フィリピンをはじめとする近隣諸国との間で、かねてから緊張を引き起こしてきた。

12日にはこれとは別に、中国の軍艦が米軍の軍艦を追跡する事件もあった。

本誌は中国外務省に連絡を取ったが、記事の公開までに返答はなかった。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中