最新記事

野鳥の異常行動・怪死相次ぐ 目が腫れ上がり、人を恐れず...米

2021年7月1日(木)18時50分
青葉やまと

野鳥に異変が起き、未知の感染症が疑われる WKYC Channel3-YouTube

<米首都ワシントンD.C.近郊で、野鳥たちが謎の異常行動を見せている>

アメリカの首都ワシントンD.C.の近郊で、野鳥に異変が起きている。通常では見られない振る舞いが続々と目撃されているほか、庭先や路上などで死骸の目撃例が増えており、回収された死骸には伝染病にかかったかのような外観上の異状が見られる。

最も顕著な症状は目の異変だ。目が異常に腫れ上がったり、まぶたが大量の分泌物が固着して目が塞がれたりしてしまい、視力を失っているケースが目立つ。回収された鳥の死骸には、左右の目が異なる大きさに膨らんでいたり、目の周囲にカサカサとした物体が大量に付着していたりするものが多く見られる。

これに加え、神経の異常も疑われている。一部の鳥は発作やふらつきなどの症状を示し、飛ぶことができなくなっているほか、人を恐れなくなり積極的に手のひらに乗るようになる個体もある。ここ1〜2ヶ月で市民や当局職員たちが発見した例は数百件に上るが、専門家たちは原因を見出せていない。

米公共放送のNPRが運営するDCイスト誌によると、首都の野生動物保護団体のもとに4月11日に持ち込まれた1羽の鳥が最も早い確認例だと見られる。団体に持ち込まれる時点ですでに「鳥たちにとって悲惨な状態」となっているものが多く、既知の治療法がいずれも効果を示さないことから、獣医たちは安楽死以外の選択肢を持たないのが現状だ。

こうした報告は首都ワシントンD.C.の位置するコロンビア特別区だけでなく、隣接するメリーランド州やバージニア州など、首都近郊で5月下旬以降から増加している。オハイオ州野生生物局の生物学者であるラウラ・カーンズ博士は米NBCニュースに対し、これまでに同州で報告された例だけで数百羽の規模に達すると述べている。

ムクドリやカラスなど、街中の身近な野鳥に拡大

異常行動と謎の死の事例は、当初は特定の種に集中していた。日本の市街地でもよく見られるムクドリの一種に加え、オンタリオ州の州鳥としても親しまれるアオカケス、そして街のゴミを漁るなどカラスに似た習性を持つオオクロムクドリモドキと、計3種が中心だった。

ところが時間が経つにつれ、街中でよく見られるさまざまな野鳥に広がりを見せている。現時点では、カラス、シジュウカラ、コマドリなどのごく一般的に見られる種を含め、10種以上に拡大した。庭先や公園・路上などで死にかけたり盲目になったりしているところを住民が発見し、野生動物局に通報するというのが主なパターンだ。

国立公園内でもレンジャーが発見しているが、広大な敷地内をくまなく捜索しているわけではない。すでに報告された例以外にも、未発見の例が相当数に上るものとみられる。ケンタッキー州魚類・野生生物資源局のケイト・スランカード博士はNBCニュースに対し、「これはおそらく、これまでにない問題です」と述べ、刻々と拡大する状況に対し危機感を示した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

仏サービスPMI、4月速報1年ぶりに50上回る 製

ビジネス

ECBは6月利下げ、それ以降は極めて慎重に臨むべき

ビジネス

日本の格付け「A」に据え置き、アウトルック「安定的

ビジネス

超長期国債中心に円債積み増し、リスク削減で国内株圧
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中