最新記事

インド

病院がICUを放棄? 無人の部屋に死体のみ、訪ねた親族が発見 インド

2021年6月14日(月)18時20分
青葉やまと

親族たちは酸素不足の報せを受けていたものの、死亡の危険があるとは必ずしも認識していなかった模様だ。英BBCはある遺族のコメントとして、「私たちは(病院スタッフから)、2台の車が酸素の調達に出動したため心配する必要はない、と約束されていた」と伝えている。

実際のところ病院の入り口付近には、大量の酸素シリンダーが確保されていた。しかし、午後9時ごろまでには、そのほとんどが姿を消していたという。不安を募らせていた親族はその後さらに、院内から関係者の姿がほぼ消えていることに気づいた。胸騒ぎを覚えた親族たちがICU前へ駆けつけたところで、件の動画の撮影に至ったという流れになる。

病院側は暴徒化を恐れていた

ほぼ全てのスタッフが持ち場を離れていた事態について病院は、患者の親族が暴徒化することを恐れた安全上の措置だったと述べている。医師たちの職場放棄だとの指摘が上がる一方で、安全のため避難することはやむを得なかったと病院側は主張する。

インドのスクロール誌は、関係者専用の食堂に身を隠すよう院長からスタッフへ指示があったと伝えている。当日は数名の親族たちが病院職員に暴行を加える事件が発生しており、これを受けての対応だったという。警察が院内に到着してからは、15名から20名ほどのスタッフが速やかに業務に戻った、と院長は説明している。

実際に親族たちは暴徒化寸前の状態になっており、医師たちが現場にいればさらなる暴行の犠牲者となっていた可能性もある。この病院では事件前週にも、患者の親族たちが破壊活動を行い、スタッフに危害を加える事件が発生していた。医療関係者の安全を守るためであれば、緊急対応として妥当であったとの見方がある。

本件は動画が拡散したことで話題となったが、このような事態はインド国内の各所で発生している。愛する者を失った人々の怒りが医療関係者に向かうという、やるせない状況が続いているようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、米特使と和平案巡り会談 欧州に「戦う準

ビジネス

次期FRB議長の人選、来年初めに発表=トランプ氏

ビジネス

ユーロ圏インフレは目標付近で推移、米関税で物価上昇

ワールド

ウクライナのNATO加盟、現時点で合意なし=ルッテ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドローン「グレイシャーク」とは
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 6
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 7
    【香港高層ビル火災】脱出は至難の技、避難経路を階…
  • 8
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中