最新記事

中国

G7「対中包囲網」で賛否両論、一時ネットを遮断

2021年6月16日(水)15時17分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

●アメリカが最近行っている対中批判のほとんどをG7に持ってきたが、コミュニケのトーンは、アメリカが単独で言ってきた対中攻撃の勢いに比べてずっとトーンダウンしている。

●それは何を意味するかと言うと、どんなにアメリカが頑張ってみたところで、他のG7のメンバー国は、それほど中国と対立したいとは思っていない現実を表しているのである。

●たとえばアメリカは新疆に関しては「種族絶滅」(ジェノサイド)が発生しているとさえ公然と言っているが、しかしG7コミュニケではもっと柔らかな表現しかない。これはアメリカが西側諸国を誘い込むことは出来ても、決してアメリカの思い通りに西側諸国を動かすことは出来ないことを物語っている。特にドイツやイタリアおよびEUの指導者は、G7コミュニケが「中国と敵対するためにあるのではなく、中国と話し合ってうまく付き合っていくためにあるのでなければならない」と主張した。その結果、コミュニケは「アメリカが主導してはいるが、各国の妥協の産物でしかない」。

●おまけにこれらは世論と外交の面でのみ(言葉の上で)何とか妥協できる性格のもので、実際の行動で何かできるかと言うと(筆者注:たとえば経済的に封鎖するといった実力行動などができるか否かと言うと)、それは非常に困難だろう。事実、コミュニケにはそのような具体的なものは何も書かれていない。これはすなわち利害関係においてG7メンバー国内では巨大な違いがあることを意味している。

●アメリカが自国の覇権を維持するために、どんなに「対中統一戦線」を組もうとしても、経済関係など他の面において、ヨーロッパ諸国は中国と不可分の協力関係にある側面がそれぞれあり、その差異を乗り越えることは、アメリカには出来ない。アメリカは自ら挫折することだろう。

実はアメリカの足を引っ張っていた日本・イタリア・ドイツ

日本・イタリア・ドイツがアメリカの足を引っ張り、日本がいかに優柔不断で孤立していたかを論じる報道がアメリカで見られる。たとえばアメリカのVOA(Voice of America)やワイントン・ポストなどの記事である。

6月12日付けのVOAは"G-7 Split on Biden's Anti-China Push"(G7、バイデンの反中推進に賛否両論)という見出しの報道をしているが、その中で「イタリア、ドイツやEU代表は反中推進に消極的で、むしろ中国に協力的な傾向にあるが、(中略)日本は最もどっちつかずで躊躇している(アンビヴァレントだ)」と表現している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相、ガザへ「強力な」攻撃指示 ハマスの

ワールド

米テキサス州、鎮痛剤「タイレノール」製造2社提訴 

ワールド

米中首脳、フェンタニル規制条件に関税引き下げ協議へ

ビジネス

ユナイテッドヘルス、25年利益見通し引き上げ 成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持と認知症リスク低下の可能性、英研究
  • 4
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 7
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 8
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理…
  • 9
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中