最新記事

インタビュー

山口香JOC理事「今回の五輪は危険でアンフェア(不公平)なものになる」

2021年6月8日(火)06時40分
西村カリン(仏リベラシオン紙東京特派員)
山口香JOC理事

本誌のオンラインインタビューに答える山口香JOC理事 Newsweek Japan

<JOC(日本オリンピック委員会)理事だが、東京五輪の開催を危惧する山口香氏。なぜ政府は国民の不安や反対に応えないのか。今回の五輪、そして今後の五輪にどのような懸念があるか。単独取材に答えた>

東京五輪の開会式(7月23日)まで50日を切ったが、新型コロナウイルスの感染が収まらない中での大会開催には、多くの国民が不安や反対の声を上げている。

しかし日本政府や東京五輪・パラリンピック大会組織委員会はひたすら「安心・安全」を繰り返すばかりで、人々の疑問に答えているとはいいにくい。

そんな状況を危惧する1人が、柔道の五輪メダリストで現在は筑波大学教授を務める山口香JOC(日本オリンピック委員会)理事だ。

「五輪は開催されると思うが、今回の五輪は『安全ではなく危険です』から入ったほうがいいと思う」と話す山口氏に、仏リベラシオン紙東京特派員の西村カリンが話を聞いた(*回答はJOC理事ではなく、個人としての意見)。

――東京五輪をめぐる今の混乱状況は、「ノーと言えない日本」と「上から目線のIOC(国際オリンピック委員会)」の関係の悪循環の結果ではないか。

ノーと言えない、というのもあるが、日本人は何かを頼まれたときに、できないと分かっていても「善処します」「頑張ってみます」と曖昧な答えをする。

日本側が「なんとか頑張ります」と言えば、IOC側は「できる」と捉える。だからIOCとしては「組織委員会や日本政府が大丈夫だと言っているのに、なぜ国民は怒っているのか?」と不思議に思っているのではないか。

IOCには欧米の方が多いので、日本の感染者数を見て、状況はコントロールされていると感じていると思う。

実際には、コロナ患者を受け入れられる病院は少ないし、若い人でも入院できず自宅で亡くなるケースが少なからずある状況だ。「また感染が拡大したら医療現場は大変なことになる」と日本人は心配しているが、たぶん、そのことを日本側がIOCにうまく伝えていないんだと思う。

――IOCはどのようにして情報収集しているのか?

私にはその点は分からない。ただおそらく、「オリンピックはどの国でやっても反対はある。リオデジャネイロでもソチでもデモはあった。いつでもあるんだ」というのがIOCの考え方。

今回も、「日本で反対の声があるというが、オリンピックとはそういうものだ」「組織委員会や政府の人たちが大丈夫だと言っているのに、なぜ私たちがこれ以上心配しなくてはならないのか?」という気持ちだと思う。問題なのは、五輪組織委員会、JOC、国と、国民との間で議論が全くできていないところだ。

政府や組織委員会、JOCからはこれまで一度も、もしかしたらできないかもしれない、という話が出たことがない。

それは、パリ行きの飛行機がいったん飛んだらパリに着陸することだけを考えろというようなもので、途中で何かあっても、違うところに降りたり引き返したりすることはないというマインドなんですよ。

飛行機は、天候が悪くても飛ぶことはある。でもそのときは必ず、状況によって引き返すこともありますとアナウンスされる。途中で何かあっても、引き返さないで突っ込みますと言われたら、普通はみんな搭乗しない。

「五輪を開催しない」という選択肢を持たずに政府が飛んでいることに、国民はすごく不安を感じていると思う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英財務相は銀行の準備預金利子の課税を、シンクタンク

ワールド

トランプ一族「ビットコイン社会を愛している」 10

ワールド

焦点:ウクライナ和平に向けた対ロ交渉、米政権混乱の

ワールド

アングル:高関税に知恵絞るインド中小企業、欧州・ア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ」とは何か? 対策のカギは「航空機のトイレ」に
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 7
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 8
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    自らの力で「筋肉の扉」を開くために――「なかやまき…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中