最新記事

選挙

次期フィリピン大統領は2世候補の一騎打ち? 来年の選挙へ早くも候補者選定

2021年6月16日(水)19時41分
大塚智彦

その6人はレニー・ロブレド副大統領を筆頭に、アントニオ・トリリャネス前上院議員、マリー・グレイス・ポー上院議員、シバック党代表エドワルド・ビリャヌエバ氏、ルソン島バタンガス州知事のヴィルマ・サントス・レクト氏、法律家のホセ・マニュアル氏となっている。

6人の候補者を発表した「イサンバヤン」のメンバーでもあるデル・ロサリオ前外相は「野党擁立候補者に関しては今後も常にアップデートした情報を提供していく」と述べて、現時点ではこの6人から正副大統領候補を絞り込んでいくとの見通しを示した。

与党は大統領一家を軸に

これに対しドゥテルテ大統領を支える与党側はサラ市長に次いで知名度が高いマルコス元大統領の息子、フェルナンド・マルコス(愛称ボンボン)前上院議員、国民的英雄のボクサーであり現職上院議員でもあるパッキャオ氏などを有力候補者としている。

このほかにも元警察長官のパンフィロ・ラクソン氏が6月8日に地元メディアから「立候補を検討している」と伝えられ、その去就が注目されている。

サラ市長はミンダナオ島での支持率は高いものの全国レベルではパッキャオ氏やバンバン氏には及ばないと言われている。パッキャオ氏はフィリピン国民の間では絶大な人気を誇り、かつて俳優のジョセフ・エストラーダ氏が1998年に大統領に選出された土壌もあるだけに、大統領選で台風の目になりそうだ。

そうした人気を背景にパッキャオ氏は地元テレビ局に対して「他の者にもチャンスを与えるべきだ」と発言。与党内がサラ市長支持一色になることへの警戒感を明らかにし、サラ市長を牽制する動きに出ている。

一部報道ではパッキャオ氏は「ラバン」を離党して新党を立ち上げるのではないか、との観測も出ているという。

ボンボン氏はマルコス元大統領の息子として全国的な知名度があり、とりわけ父親の出身地であるルソン島北部での支持率は高い。ただマルコス元大統領が在任中に戒厳令を発令し、反政府を訴えた活動家や学生、市民を弾圧した「フィリピンの暗黒時代」を生んだことは今も多くの国民が記憶している。

ドゥテルテ大統領は就任後の2016年11月、実家敷地内に保存されていたマルコス大統領の遺体をマニラ首都圏の「英雄墓地」に埋葬を断行した。歴代の大統領が国民の反マルコス感情への配慮から躊躇してきた懸念を強行突破したことで、マルコス一族とドゥテルテ大統領は急速に接近したと言われている。

こうした経緯から与党陣営の大統領選候補は「ドゥテルテ一族」と「マルコス一族」という大統領経験者の親族を中軸に進み、そこにパッキャオ氏がどう関わっていくのるかが今後の焦点となる。

いずれにしろ、選挙までまだ1年という現段階から与野党から多くの大統領選立候補者の名前が取り沙汰されており、2022年の大統領選は白熱した乱戦になりそうだ。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、応援演説で円安メリットに言及 米関税のバ

ワールド

米政府機関の一部が閉鎖、短期間の公算 予算案の下院

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 10
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 6
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中