最新記事

中国

中国共産党建党100周年にかける習近平──狙いは鄧小平の希薄化

2021年6月22日(火)10時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
習近平

6月4日、建党100周年関連行事に現れた習近平 Aly Song-REUTERS

6月18日、習近平は北京に建てた中国共産党歴史展覧館を視察し、入党の宣誓文を唱えた。キーワードは「不忘初心」。「初心」は毛沢東と父・習仲勲を指す。鄧小平の存在を希薄化し「復讐」を顕し始めた。

習近平の展示スペースは鄧小平の3倍

6月18日、習近平国家主席が中共中央総書記としてチャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員会委員7名)と王岐山国家副主席など、党と国家のリーダーを引き連れて、中国共産党歴史展覧館を視察した。

その様子を中央テレビ局CCTVの夕方のニュース「新聞聯播」が報道した。リンク先の19:02から19:08の6分間ほどをご覧いただきたい。

展覧会場は以下の4つの部分によって構成されている。

第一部分:中国共産党を建立し、新民主主義革命の偉大な勝利を奪取

第二部分:中華人民共和国を建国し、社会主義革命と建設を遂行

第三部分:改革開放を実行し、中国の特色ある社会主義を創出発展

第四部分:中国の特色ある社会主義が新時代に入ることを推進し、小康社会を全面的に建設し、社会主義現代化国家への新しい征途の全面的建設を創始する

第一部分にある「新民主主義革命」というのは毛沢東が目指していた革命で、新中国(中華人民共和国)が誕生したばかりの頃は、毛沢東はまだ「新民主主義体制」の構築を試みていた。なぜなら「中華民国」の蒋介石が、中国共産党を「野党」として政治運営に関わらせなかったので、毛沢東はそれを「非民主主義的だ」として、「民主的に野党も入れて国家運営すべきだ」と主張していた。だから建国当初は野党や無党派が数多く国家指導層に入っていた。

それが第二部分の「社会主義体制」へと転換されていったのは朝鮮戦争が起き、アメリカが中国に原子爆弾を投下する可能性が生まれたからだ。

興味深いのは第三部分だ。

改革開放に触れてはいるが、ここは「鄧小平+江沢民+胡錦涛」3人のコーナーになっていて、大雑把に全体が4分割され、その一つがさらに3分割されているとなると、鄧小平コーナーは全体の「12分の1」ということになる。

しかもCCTVの説明では第三部分に関して「経済特区」という言葉を用いて説明した。

この「経済特区」は習近平の父・習仲勲が思いついた概念だ(詳細は『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』)。

第四部分は、言うまでもなく習近平の独壇場である。

習近平コーナーは4分の1強なので、鄧小平の3倍はあることになる。

鄧小平は毛沢東が指名した後継者・華国鋒を失脚させ、その代わりに就任させた胡耀邦を失脚させ、胡耀邦の代わりに据えた趙紫陽を失脚させたが、彼らを「過渡期の指導者」と位置づけ、毛沢東時代を「革命第一世代」とすれば、その次に来るのは自分・鄧小平であり、自らを「革命第二世代」と位置付けた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中