最新記事

研究所起源説

トランプ氏「中国は世界に10兆ドル賠償すべき」 武漢ウイルス研究所起源説で

2021年6月7日(月)18時00分
青葉やまと
共和党集会で演説するトランプ前大統領

6月5日、ノースカロライナ州で開かれた共和党集会で演説するトランプ前大統領 REUTERS/Jonathan Drake

<公の場に4ヶ月ぶりに姿を現したトランプ氏は、中国はアメリカと世界に賠償金を支払うべきだとの立場を示した>

新型コロナウイルスをめぐり、武漢のウイルス研究所を起源とする説がにわかに再注目されている。国際世論の厳しい目が中国に注がれるなか、この流れにトランプ前大統領が加勢した。

トランプ氏は6月5日、東部ノースカロライナ州で開かれた共和党集会で演説し、武漢の研究所流出説が再び真実味を帯びてきていると指摘した。「中国は彼らがもたらした死と破壊の代償として10兆ドルを、アメリカ、そして世界に対して支払うべきだ」と述べたほか、制裁として中国製品に100%の関税を適用すべきだとの考えを明らかにした。

さらにトランプ氏は、「中国共産党の賠償と責任をアメリカと世界が要求すべき時がきた」「我々は皆一丸となり、中国は償わねばならないと宣言すべきだ」と支持者たちに呼びかけた。具体的な手段としては「第一歩として、あらゆる国々が共同して中国に対するすべての負債を放棄し、賠償金の頭金とすべきだ」と踏み込んだ案を示した。

昨年からトランプ氏は人工ウイルス説を支持していた

研究所流出説については今年2月、その可能性は薄いとする調査結果をWHOの調査チームが発表している。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が5月下旬、パンデミック以前にウイルス研究所の研究者3名が体調を崩していたことを報道。バイデン大統領が90日間の再調査を米情報機関に対して指示たことで、にわかに信憑性が高まった。フェイクニュースだとして研究所流出説の投稿を禁止していたフェイスブックはこれを受け、かかる措置を解除している。

ワシントン・ポスト紙は米外交問題評議会・上席研究員のヤンゾン・ファン氏による寄稿記事を掲載した。記事は、「中国に限らずとも研究施設からの漏洩は起こるものであり、真剣に捉える必要がある」「これまで中国はパンデミックの封じ込めで世界から名声を得ており、とくに西洋諸国との比較で顕著だった。しかし、もし中国の科学者たちがそのパンデミックの原因だったとすれば、そうした栄誉は急速に消え去るだろう」と論じ、真実であれば中国のソフトパワーに大きな変化をもたらすとの見通しを示している。

トランプ氏は演説のなかで、研究所由来の人工ウイルスとする説を自身が早くから支持していたとも述べ、その実績を強調した。氏は「今となってはいわゆる『敵』も含め、武漢研究所からの流出説に関してトランプ大統領は正しかったのだと口にしはじめている」との認識を示している。

かつての政敵に反撃を繰り出す

研究所起源説の再興は、トランプ氏が任期中に対立していた米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長に対し、一矢報いることにもなりそうだ。在任中のトランプ氏は感染対策をめぐり、ファウチ氏を「大災害」と表現するなど激しく対立していた。

演説でトランプ氏は、「ファウチ博士と中国とのやり取りは誰にも無視できないほど明白だ」と述べ、武漢の研究所との関係をめぐる疑惑の渦中にあるファウチ氏を厳しく批判している。ファウチ氏は公式には自然発生説を唱えながら、ラボでの遺伝子操作を示唆する不自然な性質がウイルスにあったことを早期に認識していた疑いが持たれている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平「断念せず」 引き続き関

ワールド

トランプ氏、27日にアイオワ州訪問 演説で生活費高

ワールド

ロシアとの高官協議、来月1日再開の見通し=ゼレンス

ワールド

トランプ氏、ミネソタ州知事と協議 地裁は移民摘発停
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 7
    中国、軍高官2人を重大な規律違反などで調査...人民…
  • 8
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中