最新記事

アジア

進む自衛隊とミャンマー国軍の将官級交流 クーデター首謀者も3度来日、安倍首相と会談

2021年5月4日(火)10時25分
水島了(日刊ベリタ記者)
ミャンマー国軍のクーデターに抗議して撃たれた市民

ミャンマー国軍は国民に銃を向けた(写真は、治安部隊に撃たれた負傷者を運び出す抗議デモ参加者。3月24日、ヤンゴン) REUTERS

<ミャンマー国軍に「パイプがある」とされる日本政府や自衛隊との交流はいかにして始まったのか、そしてその目的は何だったのか>

軍事クーデターから3カ月が過ぎたミャンマーでは、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の暴力停止の呼びかけ後も国軍の市民の民主化運動への弾圧は収まらず、死者は4月末時点で750人を超えている。欧米諸国は国軍トップらへの制裁を強化しているが、日本政府はいまだに明確な姿勢を示していない。そんな中、在日ミャンマー人らは、4月14日に日本ミャンマー協会、4月22日には日本財団の前で抗議デモを行った。彼らがこれらの団体に怒りをぶつける背景には何があるのか。まず1枚の写真に注目したい

ミャンマー国軍や日本の防衛省関係者と思われる15人の人物が横二列に整列した記念写真で、写真の上には、「日緬将官級交流プログラム」と書かれている。主催は日本財団で、日付は2019年8月23日。前列左には日本財団の笹川陽平会長、前列右から3番目には日本ミャンマー協会の渡邉秀央会長が写っている。日緬将官級交流プログラムとは何か。その謎を紐解くには、時計の針を8年前に戻す必要がある。

海自練習艦の戦後初のヤンゴン寄港から将官級交流へ

2013年9月30日、ミャンマーの最大都市ヤンゴンの港に3隻の艦艇が到着し、港は出迎える市民の歓声に包まれた。海上自衛隊の練習艦「かしま」、「しらゆき」、護衛艦の「いそゆき」が、遠洋海洋航海の途中にヤンゴン港に寄港したのだ。海上自衛隊の練習艦がミャンマーに来るのは戦後初めてで、このイベントは現地のメディアでも取り上げられた。

これを機に、日本の防衛当局とミャンマー国軍は急速に関係を深めていく。同年12月には来日したテインセイン大統領と安倍首相が会談し、今後も両国間の軍事協力・交流を促進することで一致した。2014年5月には当時の岩崎茂統合幕僚長がミンアウンライン国軍総司令官からの招待でミャンマーを訪問。今後の自衛隊とミャンマー国軍との交流等について議論し、ミンアウンライン司令官の訪日を打診した。その後、関係者の入念な下準備と根回しにより、同年9月に同司令官の訪日が実現する。この時、当時官房長官であった菅現首相が会談しており、日本ミャンマー協会の渡邊秀央会長、日本財団の笹川陽平会長も同席している。こうして、日本とミャンマーの軍事交流は始まったのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英総合PMI、12月速報は52.1に上昇 予算案で

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中