最新記事

五輪ボイコット

IOCは罪深い北京五輪を中止せよ──新疆や香港での人権抑圧を追認するな、と人権団体

Activist Says Boycott of Beijing Olympics Only Way Forward: 'Time For Talking With the IOC Is Over'

2021年5月18日(火)15時56分
レベッカ・クラッパー
中国国旗と五輪の旗

中国政府は北京五輪のボイコット案について「スポーツの政治利用」だと反発Tingshu Wang-REUTERS

<2008年の北京夏季五輪のときは、五輪開催が人権状況の改善につながるとIOCは言った。だが現状は、当時よりはるかに悪化している>

中国が少数民族に対する人権侵害を行っているとして、ウイグル人やチベット族、香港市民などを代表する複数の組織の連合が、2022年に北京で開催される冬季五輪の完全ボイコットを呼びかけている。

チベット行動協会の活動家ラドン・テトンはAP通信に対して、IOC(国際オリンピック委員会)との話し合いの時間はもう終わったと語った。彼女は2008年に北京で開催された夏季五輪のときにも、チベット族に対する人権侵害を理由にボイコットを呼びかける運動を率いたが、それを理由に身柄を拘束され、国外退去処分を受けた。

「これまでに多くの人が誠意をもってIOCに働きかけを行い、ウイグル人やチベット族など、中国による人権侵害の影響を最も受けてきた人々の口から直接説明を行って、この問題について理解して貰おうと努力してきた」とテトンは言い、こう続けた。「だが現実に彼らがどのような迫害に遭っているのかについて、IOCには全く興味がないことがはっきり分かった」

ボイコットを求める声に対してIOCは、オリンピックは政治的に「中立」でなければならないと述べてきた。同様に米国オリンピック・パラリンピック委員会も、ボイコットはアスリートたちを傷つけるだけだとしている。

開催地の変更を要求してきたが

以下は、AP通信の報道だ。

中国による少数民族に対する人権侵害を訴える複数の組織が、2022年に北京で開催される冬季五輪の全面的なボイコットを呼びかけている。今後、IOCやアスリート、大会スポンサーや各競技連盟に対する圧力が高まりそうだ。

ウイグル人、チベット族や香港市民などを代表するチベット行動協会は5月17日に声明を発表。「外交的ボイコット」(選手の五輪参加は禁じないが、代表選手団を五輪に派遣するための資金提供を禁止する)
やIOCとのさらなる交渉といったより穏便な案を否定し、大会の完全ボイコットを呼びかけた。

同協会の活動家であるテトンは、「IOCとの話し合いの時間は終わった」と述べ、こう続けた。「IOCにとっても国際社会にとっても、22年の北京五輪をいつもどおりの大会にする訳にはいかない」

北京冬季五輪は、今夏に延期された東京五輪の閉幕からわずか半年後となる、2022年2月4日に開幕を予定している。

2020年には複数の人権擁護団体がIOCと面会し、開催地の変更を要求した。一連の話し合いに参加した重要なメンバーが、世界ウイグル会議のズムレットアイ・アーキンだ。

テトンは(2008年の北京五輪ボイコットを呼びかけた)2007年の運動を引き合いに出し、「現在の状況は当時に比べて明らかに悪化している」と主張。当時IOCは、2008年の北京五輪が中国における人権状況の改善につながると述べていたと指摘し、「(2022年の)大会が予定どおり開催されれば、国際社会は中国政府がしていることにお墨付きを与えることになる」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中