最新記事

五輪ボイコット

アメリカの北京五輪ボイコット発言に中国が猛反発

China Warns of 'Robust' Response If U.S. Boycotts 2022 Olympics

2021年4月8日(木)15時09分
ナタリー・コラロッシ
北京冬季五輪の聖火リレーのトーチ

アメリカは五輪を政治利用していると反発する中国(写真は2月に北京で発表された聖火リレーのトーチのデザイン) China Daily via REUTERS

<米国務省報道官が人権問題を理由にボイコットの可能性を示唆したことを受け「強い反撃に遭うことになる」と警告>

人権問題をめぐる米中の対立が深まるなか、もしアメリカが2022年に北京で開催される冬季五輪のボイコットを決めれば「強い反撃」に遭うことになるだろう、と中国は警告した。

米国務省のネッド・プライス報道官が4月6日、中国による新疆ウイグル自治区のイスラム教徒やチベット族、香港市民に対する人権侵害が懸念され、北京五輪にどう対応するのが最善の策なのか同盟諸国と協議するつもりだと表明。「世界中の同盟国や友好国と、緊密に協議した上で決める」と述べていた。

AP通信によれば、米国務省は当初、北京五輪のボイコットも選択肢のひとつだと示唆していたものの、その後、ボイコットの問題についてはまだ議論されていないと修正した。

プライスは6日の会見の中で、北京冬季五輪は2022年とまだ先の話で、アメリカの対応についてまだ結論は出ていないとも述べていた。

「(北京冬季五輪は)今後、是非とも協議していきたいと考えている問題だ。協調した対応は、アメリカだけではなく同盟国や友好国の利益にもなる。この問題は、現在も今後も、検討議題のひとつだ」とプライスは語った。

この発言を受けて7日、中国外務省の趙立堅副報道局長は、北京五輪のボイコットを決めればアメリカは何らかの「強い反撃」を招くことになるだろうと警告。中国は少数民族に対する人権侵害など一切していないと否定した。

「五輪憲章違反」と中国

AP通信によれば、趙立堅は7日の会見の中で「スポーツの政治問題化は五輪憲章の精神に反し、全ての国の選手の利益を損なう」と主張。「国際社会はそれを受け入れないし、アメリカのオリンピック委員会だって同じだろう」と述べた。

中国は、100万人を超えるウイグル人を新疆ウイグル自治区の収容施設に拘留し、強制労働をさせていると非難されている。

米労働省は2020年10月、ウイグル人の労働者たちが「ひどい労働条件に耐える」ことを強いられていると指摘。「報酬もほとんど支払われず、施設を出ることも許されず、家族との連絡は制限されているか全くできない状態に置かれている。家族との連絡や面会が許可されても、厳しく監視されるか短時間で打ち切られる」と報告していた。

1月には、アメリカは国際社会に先立って、ウイグル人に対する中国政府の行為は「ジェノサイド(集団破壊・虐殺)」にあたると宣言した。

ウイグル人の問題に加えて、中国はチベットの少数民族に対する扱いや、香港の反体制派や民主化を求める抗議運動の厳しい取り締まりについても、問題視されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 9
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中