最新記事

東京五輪

もし開催でも、アメリカは東京五輪をボイコットすべきだ

2020年3月23日(月)17時55分
ジョエル・アンダーソン(スレート誌記者)

日本に到着した聖火を出迎える大会組織委員会の森喜朗会長(左) ISSEI KATO-REUTERS

<新型コロナウイルス・パンデミックの真っ最中に大規模な国際イベントを開催することがいかに無謀か。アメリカの五輪ボイコットは前例のないことではない>

新型コロナウイルスが引き起こした大混乱の中で、つい忘れられがちな出来事が3月20日にあった。五輪の聖火が日本に到着したのだ。

コロナウイルスは人々の生活や各種イベントの計画に大打撃を与えている。スポーツも例外ではない。だが2020年東京五輪に関しては、7月の開催当日までに状況が好転するのではないかという楽観論が根強く残っている。

安倍晋三首相は3月17日の記者会見で、人類がウイルスに打ち勝つ証しとして五輪を開催したいと語った。ちょうど同じ日、日本オリンピック委員会(JOC)の副会長を兼務する日本サッカー協会の田嶋幸三会長がコロナウイルスの感染検査で陽性と判明。世界中のサッカー関係者が大急ぎで田嶋との接触があったかどうかを確認する羽目になった。

この一件だけでも、パンデミック(世界的な大流行)の真っ最中に大規模な国際イベントを開催するのがいかに無謀か分かりそうなものだ。既に東京五輪の中止または延期を求める声が各方面から上がっている。もしIOC(国際オリンピック委員会)が賢明な判断を下せないのであれば、米オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)はボイコットを宣言すべきだ。

今やアメリカ国内のスポーツ・イベントは軒並み中止または延期されている。レスリング、ボート、飛び込みなど、一部の五輪予選も延期が決まった。USOPCもコロナウイルス感染拡大への懸念を理由に2カ所のトレーニングセンターを閉鎖したが、東京五輪については今のところ参加する前提で動いているようだ。多くの選手たちも、まだ日本行きを諦めていない。今月、何人かのレスリング選手は既に五輪予選を戦った。ビーチバレーのペアは五輪出場資格を得るためオーストラリアに向かう予定だったが、大会は直前で延期された。18日には、東京大会で初実施される空手の女子代表が決定した。米陸上連盟は今も6月の五輪予選開催を目指す姿勢を変えていない。

アメリカの五輪ボイコットは前例のないことではない。40年前の今月、当時のカーター大統領はソ連のアフガニスタン侵攻を理由に1980年モスクワ大会のボイコットを発表した。

日本では19日、最も影響が大きかった北海道でコロナウイルスの爆発的な感染拡大は回避されたとして、緊急事態宣言を終了した。だが、感染者が再び急増する事態がないとは言い切れない。現に同じアジアの韓国、中国、シンガポールは、感染拡大の第2波に直面している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

貿易収支、8月は2425億円の赤字 対米自動車輸出

ワールド

TikTok米事業継続で合意、売却期限12月に延期

ワールド

林官房長官、18日出馬会見で調整=関係筋

ワールド

ドイツ経済、今年はゼロ成長へ─IW=国内紙
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中