最新記事

ワクチン

ファイザー製2回目接種、遅らせる方が有利か 抗体3倍に 英研究

2021年5月18日(火)19時10分
青葉やまと

ガーディアン紙は免疫効果が高まるだけでなく、ワクチンによる保護がより長期間持続する可能性を挙げている。抗体レベルはいずれにせよ時間とともに自然に減衰してゆくが、2度目の接種の時点でより高い水準の抗体が得られるのであれば、より長い時間をかけて減衰することが考えられる。

仮に3度目以降の接種が必要な場合でも、そのタイミングを遅らせることができる計算だ。ワクチンの供給量が限られている現在、同じ効果を得ながら社会全体の期間あたりの消費数を抑える結果が期待できそうだ。

日本では現状、3週間隔での接種が推奨されている

現在日本ではファイザー製ワクチンを接種する場合、別の予防接種を挟むケースなどの例外を除き、基本的には初回接種のおおむね3週間後にブースターショットを打つことが推奨されている。

3週間隔での接種ができない場合については、できる限り速やかに2回目の接種を促す方針となっている。現状ではあえて遅らせるという考えは見られないが、今後各国の動向を見ながら接種間隔を調整する余地はありそうだ。

エディンバラ大学で免疫・感染症学を専門とするエレノア・ライリー教授はガーディアン紙に対し、ワクチンが限られており多くの人々がリスクにさらされている状況では、2回目の接種を遅らせるという方針に本研究のデータが「かなりの根拠を与える」との見方を示している。

本来3〜4週後の接種が推奨されるアストラゼネカ製ワクチンについてはすでに、イギリスだけでなくスペインなど複数の国が、12週などの間隔を空けた接種に切り替えている。

ただし、日本の接種ペースの伸び悩みは人手や物流などが課題に挙げられており、必ずしもワクチンの輸入数だけがボトルネックというわけではない。ブースターショットの時期以外にも、こうした課題を解決してゆく必要がありそうだ。

また、イギリスではロックダウンを併用したことで効果が高まったとの見方もある。英リーズ大学でウイルス学を研究するステファン・グリフィン博士は、英ネイチャー誌に対し、「人々は1回目の接種から2回目までのあいだ、理論上はぜい弱です」と述べている。より万全を期すならば、他の政策の併用が望ましいという見解があるようだ。

一方で、mRNAワクチンについては1回の接種だけでも4週後の有効率が80%から90%に達するとのデータもあり、1回接種を優先することにも相応の妥当性が認められる。

ワクチンについては日々新たな研究が発表されており、データに基づいた柔軟な政策変更が求められそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、大きな衝撃なければ近く利下げ 物価予想通り

ワールド

プーチン氏がイラン大統領と電話会談、全ての当事者に

ビジネス

英利下げ視野も時期は明言できず=中銀次期副総裁

ビジネス

モルガンS、第1四半期利益が予想上回る 投資銀行業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 2

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア黒海艦隊「主力不在」の実態

  • 3

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 4

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 5

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 6

    【地図】【戦況解説】ウクライナ防衛の背骨を成し、…

  • 7

    訪中のショルツ独首相が語った「中国車への注文」

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    「アイアンドーム」では足りなかった。イスラエルの…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 7

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    猫がニシキヘビに「食べられかけている」悪夢の光景.…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中