最新記事

起業

イスラエルが「スタートアップ大国」になれた理由は、全部これで説明できる

2021年4月27日(火)19時24分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部、前田恵理
イスラエル・ビジネス(イメージ)

Evgeny Gromov-iStock

<イスラエル軍エリート部隊出身の大物起業家が語る、イノベーションと起業家精神を身につけるカギ>

日本ではあまり知られていないが、イスラエルは世界有数のスタートアップ大国だ。人口850万人ほどの小さな国ながら、毎年1400社のスタートアップが誕生し、現在は約6000社のスタートアップが存在している。

近年では、アップル、グーグル、マイクロソフトといった世界的企業が、同国企業を積極的に買収することで、研究開発や生産の拠点をイスラエルに移している。

イスラエルはなぜスタートアップ国家としてここまで成功しているのか。そのカギとなるのが「CHUTZPAH(フツパ)精神」だ。

ヘブライ語で「大胆さ」や「厚かましさ」を意味し、「普通ではできないことを敢然と行なう勇気」といった肯定的な意味をももつ。フツパ精神は、困難に決然と立ち向かい、何事も達成可能とみなす楽観主義的なパワーをもつイスラエル人たちの力の源となってきた。

では、事業を成功に導くフツパ精神とは、生まれ持ってのものなのか、それとも後天的な性質なのか。そして、イスラエル人でなくても身に着けられるのか。

イスラエル国防軍のエリート諜報部隊である8200部隊で起業に必要なスキルを磨き、退役後に自らも起業して20年にわたり、イスラエルのテック業界をリードしてきたインバル・アリエリ氏は、誰よりもその秘訣を知る人物だ。

彼女は今年3月に発行された、『起業家精神のルーツ CHUTZPAH──イスラエル流"やり抜く力"の源を探る 』(CCCメディアハウス)で、フツパ精神の重要性と、その育て方について語っている。「フツパ精神」を解き明かした本が日本で刊行されるのは、おそらく初めてだろう。彼女によれば、起業家精神とは天性のものではなく、意識と訓練によって誰もが身につけることができるものだという。

そんなアリエリ氏に、スタートアップ後進国といわれる日本で創造性やイノベーションを身につけるためにするべきことや、イスラエルで幼少のころから養われる「フツパ精神」、兵役制とビジネスの関連性について聞いた。

──この本はどういう人たちに読んでもらいたいですか?

本書は「将来に対して関心がある人」のために書きました。

多くの人たちは、イノベーションやリーダーシップ、それに起業家精神のスキルをどのように鍛錬し、実践し、伸ばしていけばいいのかについてのアドバイスを求めています。

絶えず変化する今日の世界において、あなたがすでに成功した起業家なのか、企業の役員なのか、個人で事業をしているのか、経験豊富かどうかには関係ありません。将来のためのスキルを鍛錬し、実践し、使えるようにするための方法は常に存在するのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUと米、ジョージアのスパイ法案非難 現地では抗議

ビジネス

EXCLUSIVE-グレンコア、英アングロへの買収

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練

ビジネス

EXCLUSIVE-スイスUBS、資産運用業務見直
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中