最新記事

オフィス市場

サンフランシスコからの転出、昨年全米最多──テック企業大脱走か

San Francisco, Amid Big Tech's Battles With City, Lost More Residents Than Anywhere Else in US

2021年4月13日(火)20時15分
マリー・エレン・カナソーラ

調査レポートによれば、デジタル・リアルティとオラクルは、それぞれの本社をテキサス州オースティンに移転すると発表し、クレジット・カルマはサンフランシスコのオフィスを完全に手放した。ソフトウェア会社のオプティマイズリーは、7万8000平方フィートの本社全体を賃貸に出している。イェルプはサンフランシスコの拠点を維持する計画ではあるものの、やはり本社全体を賃貸に出している。

CEOのなかには、カリフォルニアをこき下ろす者もいる。たとえばイーロン・マスクは2020年、パンデミック下の外出禁止令で自社工場の操業再開が許されなかったことで州政府当局と衝突したあと、テスラの工場をテキサスに移転すると宣言した。

そもそも新型コロナウイルスの流行前から、シリコンバレーのテック業界は長年、一般市民や自治体当局と緊張関係にあった。サンフランシスコは2018年、テック業界に「ホームレス税」を課す法案を住民投票で可決した。貧富の格差も全米有数といわれるこの町で、ホームレス支援の財源をテック企業から年間利益の0.5%ほど徴収する法律だ。セールスフォースのマーク・ベニオフCEOのように賛成する財界人もいた一方、ツイッターのジャック・ドーシーCEOやサンフランシスコの商工会議所は、この法案に反対するロビー活動を展開した。

州内に留まり様子見の従業員

テスラ専門のニュースサイト「テスララティ(Teslarati)」が入手した市の許可書によると、テスラにはカリフォルニア州フリーモントの工場を拡張する計画があり、テキサスに工場を移すというマスクの脅しは単なる虚勢にすぎない可能性もある。ただし、前述のCBRE調査によれば、サンフランシスコからテキサスへ転居した人の数は、パンデミックのあいだに30%以上増加したという。

ただしサンフランシスコから転居した人の大半は近隣にとどまっており、サンフランシスコ郡からサクラメント郡への転居は、2020年に70%増加した。ヤスコチは、サンフランシスコのビジネスセクターの強みが失われる心配はしていないという。それどころか、サンフランシスコの人口に関しては、すぐにブーメラン効果のようなものが起きると予想する。

「人々は本当に突然、オフィスに行くことから解放された」とヤスコチは言う。「だが勤務時間の一部でもオフィスに来るように雇用側が求め始めたら、人々はサンフランシスコの街に戻ってくると予想している。すでに、任意を原則としてオフィス勤務を再開するといち早く発表した企業がいくつかあるが、この夏には、そうしたことがさらに大規模に見られるようになるのではないか」

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

加との貿易交渉「困難」、トランプ氏の不満高まる=N

ワールド

ロシア中銀、0.5%利下げ 米制裁で不確実性高まる

ワールド

カナダ首相「再開の用意」、トランプ氏の貿易交渉終了

ワールド

米、カリブ海で「麻薬船」攻撃 初の夜間作戦で6人殺
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    韓国で「ふくしま」への警戒感払拭? ソウル「日韓交流…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中