最新記事

オフィス市場

サンフランシスコからの転出、昨年全米最多──テック企業大脱走か

San Francisco, Amid Big Tech's Battles With City, Lost More Residents Than Anywhere Else in US

2021年4月13日(火)20時15分
マリー・エレン・カナソーラ
サンフランシスコのツイッター本社

サンフランシスコにはテック企業の本社が多い。写真はツイッター本社(2014年) Robert Galbraith-REUTERS

<コロナ禍の昨年、サンフランシスコから大量流出したのは主としてテック企業で働く高所得の労働者だった。貧富の格差でも全米有数のこの街はどうなる?>

2020年には、アメリカのほぼすべての大都市圏で、住民の大量流出が起きた。そのなかでも、いちばん人口流出が大きかったのが、生活費の高さで悪名高いサンフランシスコだったことが、新たな調査で明らかになった。

アメリカでもっとも生活費のかかる都市であるサンフランシスコでは、別の街へ転居した住民の数が2019年と比べて2倍以上に増え、転出者数は1000人あたり約18人にのぼった。このデータは、事業用不動産サービスを手がけるCBREグループが、米郵政公社(USPS)の転居データをもとに算出したものだ。

転出した住民の大部分は若くて裕福な労働者だったと、CBREの調査ディレクターを務めるエリック・ウィレットは本誌に述べた。空き室がもっとも多くなったのは高所得者向けの賃貸物件で、おかげで家賃は全体的に低下した。

「テック系の労働者が(サンフランシスコの)経済の一大勢力であることを考えれば、彼らが転出者のかなりの部分を占めていると推測できる」とウィレットは言う。「ただし、データを検証すると、ベイエリアから転出した住民の圧倒的大多数は、近隣地区に引っ越している。サンフランシスコを離れた人のうち、カリフォルニア州も離れた人はごくわずかだ」

調査レポートによると、湾の対岸の安い住居費と広いスペースの魅力に加えて、リモートワークの拡大が、これほど多くのサンフランシスコ住民の転居を誘う要因になったとされている。

CBREテック・インサイト・センターのエグゼクティブ・ディレクターを務めるコリン・ヤスコチが本誌に語ったところによれば、とりわけサンフランシスコでは、パンデミックの渦中に在宅勤務をするだけの十分なスペースが自宅にないと気づいた人が多かったという。さらに、人々を都市に引き寄せていたさまざまな施設が閉鎖されたことで、住民がとどまる理由もほとんどなくなった。

企業の6割がオフィスを縮小

CBREのレポートによれば、ミレニアル世代は、パンデミック以前でも徐々にサンフランシスコ離れをしていたという。テック系巨大企業が、別の都市圏に照準を合わせ始めたためだ。非営利団体「sf.citi」のデータによれば、サンフランシスコを拠点とする企業の63%が、パンデミック中に物理的なオフィスの規模を縮小した結果、延べにして1580万平方フィート(約147万平方メートル)のスペースが生まれた。

その結果、空きスペースは20%近く増加した。また、83人の創業者やCEOを対象としたsf.citiの調査では、調査対象者の4分の1以上が、従業員の30%ほどは今後もリモート勤務を続ける予定だと回答した。エアビーアンドビー、ペイパル、セールスフォース、ツイッターなど10社を超える大企業は、在宅勤務をきかっけに、オフィスの規模縮小か移転のいずれかに踏み切っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正-米、イランのフーシ派支援に警告 国防長官「結

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中