最新記事

クーデター

ミャンマー国軍、市民の遺体引き取りに現金要求か バゴー市、大学生含む多数の犠牲者が放置されたままに

2021年4月12日(月)20時12分
大塚智彦

軍が遺体引き取りに現金要求か

また「イラワディ」が伝えたところによると、軍が遺体引き取りに関して家族や親戚に対して「現金を支払えば引き渡す」と金銭を要求しているという。ただ「イラワディ」としては「この情報について確実な裏がとれているわけではない」としている。

ただ、同時にネットのSNSなどでは遺体の「引き取り」には「1遺体で12万チャット(約85ドル)」を軍が要求しているという書き込みもあり、情報の信憑性は高まっているという。

軍による戦闘がひと段落した10日朝には学校や仏教寺院に安置されていた遺体や収容されていた負傷者約200人を軍がどこかに運び去ったといわれていた。

しかし情報が錯綜し、負傷者はいずこかへ運び去られ依然として行方が不明となっているものの、犠牲者の遺体は依然として市内の学校や寺院に放置されている状態という。

そして負傷者の中には僧侶らによる手当ての申し入れを軍が拒否したため、その場で落命した人も多く、そうした遺体が多く残されており、同時にどこかに運び去られた多数の負傷者の安否も気遣われている状況という。

学校や寺院に残された犠牲者の数があまりに多いことなどから「現金支払いによる引き取り」を軍が呼びかけているものとみられている。

SNS上には「ミャンマーでは死体すら安全ではない」「遺体すら商売の道具にしている」などとの書き込みがあり、軍による「遺体引き取りに身代金」の情報は反軍政の市民の怒りを倍加させている。

地元メディアなどによると、国軍は引き続きバゴー市内で厳戒態勢を続けており、通りを歩く人や建物の窓から姿をみせた人に対しては実弾発砲を繰り返しており、バゴー市内は12日も依然として厳しい状況にあるようだ。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メキシコ当局者、中国EV現地生産に優遇策適用せず 

ワールド

WHOと専門家、コロナ禍受け「空気感染」の定義で合

ワールド

麻生自民党副総裁22日─25日米ニューヨーク訪問=

ワールド

米州のデング熱流行が「非常事態」に、1カ月で約50
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中