最新記事

歴史

新型コロナという「人類史上の厄災」を、どう未来に伝えるべきか

Archiving the Pandemic

2021年4月9日(金)18時53分
シェーナ・モンタナーリ

中心人物の1人でバッサー大学博士研究員のビビアン・チュオン(アジア系アメリカ人研究)によれば、これまで20人のボランティアが40人以上にズーム(Zoom)で話を聞いた。プロジェクトの狙いは、「数字やグラフに表れない体験を聞くこと」だ。

パンデミックの到来と共にアジア系は暴力の標的にされ、全米のチャイナタウンは深刻な不況に見舞われた。ニュースはこうした話題を連日のように取り上げるが、「暴力や不況がアジア系の人々が望む形で記憶されるとは限らない」と、チュオンは説明する。

日記の提供を遺書で約束

日常のエピソードを共有したがる人は多く、アーカイブには続々と資料が届く。インディアナ大学には、定期的に40〜50人が日記やSNSに投稿した文章を寄せている。

時間と共に増加したのが、ジョージ・フロイドやブリオナ・テイラーの殺害事件と、これに抗議するBLM運動についての投稿だ。コロナ以外の話題が増えたのは「人々がウイルスと生きることに慣れたせいだろう」と、シュワイアーは推測する。

ロサンゼルス公共図書館のアーカイブには2500件の資料提供があり、その大半が写真。休業を知らせる映画館の張り紙(「上映再開までしばしお待ちください」)もあれば、防護服姿の医療従事者のスナップもある。

インディアナ大学のプロジェクトには、元看護師がマスクをした郵便配達員の肖像を描いて寄せた。大学職員は昨年5月の「典型的な1日」をつづった日記を提供し、ハンガリー人留学生は「アメリカからの脱出」と題した手記を書いて、パンデミック初期の日々と慌ただしい帰国の顚末を伝えた。

歴史への貢献を非常に重く受け止める人もいる。シュワイアーによれば、ある女性は日記をアーカイブに提供する旨を遺言書に明記した。

A/P/A、ロサンゼルス公共図書館、インディアナ大学だけでなく各地のアーカイブが、この1年にまつわる記憶と思いを今も募集している。

「コロナ禍における生活は退屈に思えるかもしれない」と、シュワイアーは言う。「だがどんな暮らしの記憶にも、保存する価値がある」

©2021 The Slate Group

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドンバス全域割譲を要求、ロシアの主張変わらず=ペス

ワールド

マクロスコープ:住宅コスト高騰、国内消費の重荷に 

ワールド

韓国、年金基金のポートフォリオ見直しへ 為替変動と

ビジネス

エンブラエル、2年以内に年間納入100機目指す=幹
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 7
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 8
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 9
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 10
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中